気狂系の君は、職場で黒布に巻かれるそうです。

#18 ページ18

川の水は、少し淀んでいた。




モヤモヤとした気持ちを払うため、川にやってきた。



流れる水はとても落ち着く。かなり前からこの川には来ていたけど、最近来れてなかった。





「何も変わってない……やっぱり落ち着く」





自然と頬が緩む。
いつまでもこうしていられそうだ。





…ああ、この水音も、何も変わってない…



と、思ったがなにやらおかしい。
何かが浮いている様だ。



見たところ男…しかも大人だ。
プカプカしたりクルクルしたり…。


見てるだけでこちらが気まずくなってくる。
…やめたとはいえ同じ死を求める者同士。



助けた方が良いかもしれない。
でも助けられると結構落ちこむから…。





あ、沈んだ。






どうしよう凄くゆっくり沈んでく…。
あああ、やっぱり助けよう。


後で私に何か降りかかりそうだ。




「……っ」





ざぶんと川に飛び込み、男性を抱き上げる。
しかし明らかに体格が違い、私も沈み始めた。




何かふりかかるタイミングが早すぎる。




「…からたちの花…っ」



なんとか戻ろうと異能力を使って刺をさした。
しかしその途端男性から手が離れる。
岸に手を掛けてからまた手を取る。

なんとか間に合った。



ふぅ…危なかった。危うく巻き込まれそうだった。




「……あーあ、また助かってしまったねぇ」


「助かった…危なかった…」




男性は飄々とした顔で笑っている。
案外丈夫だなこの方。


「まあでも、可憐なお嬢さんに救われたのなら、それも良いかもしれない」


「そ、それは…ありがとうございま…すぅ…」



それに比べて私は…。
まだ呼吸が整っていない。




「にしても君…、面白い異能を持っているのだね。…ミカンの異能かい？」


「ふふっ、ミカンでは無いですよ。からたちです。実際この実は酸味が強過ぎて食べられませんから。」





異能をチラッと見せる。
刺が危ないのでなるべく離している。



「…君は幸運だねぇ。若し私から手を離していなかったら今頃川の底だよ？」



「え…？というのは？」


「私も異能力者なのだよ。全ての異能を無効化するというね」



…これは驚いた。異能力者だったのか。




「…えっと、あの。お名前…聞いてもよろしいですか？」



「私？………太宰。太宰治だよ。」

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