気狂系の君は、職場で黒布に巻かれるそうです。

#15 ページ15

「なあ嬢さん。」



普通死にかけの人間に話しかけますか？
…ゆっくり意識が薄れて行く心地良さに浸ってたのに。




「なんです？」



「…俺、ずっと独りなんだよ」




待ってください、これ語りだしますね？
流石に聞くのも辛いのですが…



「小さい頃、友人はほぼ死んだ。…その後暮らしてた奴も何処かに行った。」



「…私じゃ何も、出来ませんよ？」



「聞いてくれるだけでいい。…俺、知ってたんだけど、友人達を殺したのはその子なんだ」



「まあ、じゃあ、その方が憎いんですか？」




「ああ。そいつと暮らして、いつか殺すつもりだった。でも、いなくなった。」




「逃げたんでしょうね…。」





「ずっと探した。組織に入って情報探しまくった。…それで、見つけた。」





「おめでとうございます。それで、殺せました？」


もう段々と意識が消えそうになっている。

彼の顔を覗いてみると、凄く泣きそうになっていた。え…、泣きそう、なんで？


しかも、彼は意外な言葉を吐いた。








『ああ、今死ぬよ』








「え…？…わた、し？」





「…忘れやしない。寺田Aだろ。」





…てことは、あの時の子は…、生きてた？
それに優しかったあの顔は殺すため？


分かってきたのに、もう意識が途切れそうになっていた。


「…わた、し、死ぬから…！もう、大丈夫だから…！あの、時…！」




言いたい事が次々と溢れてきて、でも上手くはまとめられない。




「…憎かったのに、今は寂しい。Aはもっと強い人だった。でも、すぐに死ぬ。」






彼の顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
成長とはよく分からない。

あの時独りになって、成長しなかった自分。
しっかり成長して、同い年と思えない程背の高い彼。



でもやっぱり、あの時の優しいあの子だった。






「そうだ、復讐の死もわるくない。」




…それに死ぬ理由も無くなってしまった。
彼が生きているのなら。彼に殺されるなら。





芥川様には謝らないと。

散々迷惑を言ってしまった。


樋口様にも悩ませてしまった。



幹部のお2人にも、訳のわからない事を言った。




森様には、私の身勝手で頭を使わせてしまった






マフィアにはお世話になったなぁ。







「皆に、謝りたいな」









。









。









「何をだ」







…今の声……彼じゃない




。









。




「…何を寝ている。敵対者は生きているだろう」

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