鏡の中の【キヨ】 (ページ13)

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目が覚めたのは自分の部屋だった。

曇った空はあの時のようで、私はすぐにあたりを見回した。

しかし、それはこーすけに止められる。

「いないよ。キヨはもう。」

……夢じゃない。

証拠だと言わんばかりに、私は包帯にぐるぐると巻かれていた。

「あのね、鏡はもうばあちゃんが捨てちゃってね。だけどこれだけは…取ってこれたから。」

ヒラの持っていたものは、キヨさんの赤い欠片。

触った瞬間に崩れたあの感覚が蘇る。キヨさんの呻きと、レトさんの瞳。

祖母の狂った声に、鳴り響く破壊音。

「………………きよ……さん……ッ」

……

私は死なない。約束したから。

今目の前にはフジさんの雑貨屋がある。

「いらっしゃいま……あ、Aちゃん」

キヨはどうしたの？とあたりを見るフジさんに罪悪感が湧き上がる。

私が欠片を見せると、察したように綺麗な顔を歪ませた。

「鏡は？」

「祖母が砕きました」

さらに表情を曇らせるのを見て、直らないということを悟った。

……落ち込む私に、ごめんねと謝り、頭を撫でるフジさん。

「それで、その欠片…俺にくれないかな？」

「…え？」

フジさんは悲しそうに微笑んで、レジに置いてあったスケッチブックを取り出した。

キヨさんの描いたという猫が、そこに描かれている。

「猫、作ってあげたいんだ。その欠片も使って。キヨ自身の欠片でさ。出来たら君にあげるから」

「分かりました。…お願いします。」

欠片を渡すと、フジさんは布で丁寧にそれを包んだ。

雑貨屋を出ると、あの声が聞こえないせいでいつもの帰り道が余計に寒く感じられた。