鏡の中の【キヨ】 (ページ2)

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「ばあちゃん、ただいま」

少し息を切らせて、祖母を呼ぶ。

様子で何か察したのか、祖母は従兄弟たちを別の部屋に追いやり、私と二人きりになった。

「悪いね、あんなこと頼んじまって」

申し訳なさそうに、湯気の立ち込めるココアを私の前に差し出す。

ありがたくそれを受け取ると、祖母は静かに目の前に正座した。

「見たんだろ？鏡が動くのを」

「………うん」

「ありゃあ鏡がお前を誘ってる証拠さね」

「え？私……誘われてたの？」

「鏡は昔っから、好奇心に溢れた子供を……特にお前みたいな女の子を誘っていた」

祖母は不安げな顔で、冷たい私の手を握った。震える手に、思わず背筋がゾッとする。

「今はもう主が違う様だけど……何をするか分からんから、もうじゃんけんはしないでな」

「分かった」

そして祖母は手を離し、優しく包むような笑顔でココアのおかわりを作ってくれた。

……怖いな、誘われてたんだ。

従兄弟たちにも、この話がされた。
私の従兄弟は二人いて、二人とも男の子。

「そっか。寒いからって押し付けてごめんな」

15歳で同い年のこーすけ。数少ない頼れる人間だ。

「僕も次からはちゃんとやるね」

二つ下のヒラ。少しぼんやりしていて、なかなか放っておけない子だ。

「私も気を付けてなかったから……心配してくれてありがとう」

「これからはあたしが掃除するから、じゃんけんはするんじゃないよ」

「はーい」

「うん、分かったよ〜」

私は静かに拳を握り、蔵の方向を見つめていた。