（続）指に触れる愛が、３

あたたかい手 ページ9

「ただいまー」
『おかえり〜』
「べびちゃんもただいま」
『ふふふ』
「また成長したなあ！重ない？大丈夫？」
『大丈夫大丈夫』



デレデレとした表情で私のお腹に目線を合わせて話しかけている勇人。妊娠が分かってからはこの光景はもうお馴染みになりつつある。


微笑ましくて、まるで幸せの象徴のようなこの光景が、私も好きなんだけどね。



『あっ、いま動いた』
「！！」



シュタッと素早い動きで勇人が私のお腹に手を当てた。


……残念ながら、動くのをやめてしまったみたいです。



「ダメかあ」
『また動いたらチャレンジだ』



なかなか勇人はタイミングが合わず、未だに胎動を感じられていないのだけど、このなんとも悲しそうな表情が可愛いなと思ってしまう。


先生は、お父さんの声を聞かせてあげて、手を覚えさせてあげてね、なんて言うけれど……シーズンが始まって遠征で家を開けることも多いから、なかなか難しいよなあ。気長に待つしかないんだろうけど。



「俺この光景逃げ恥で見た……」
『あははっ(笑)』
「平匡さんと俺いま同じやん、まさに」
『ふっ(笑)』



年始に放送された逃げ恥を、これからの勉強に！と世間とは若干ずれた目線でだけどしっかりと観てくれていた勇人。まさか撮影中は、本当に自分もこうなるなんて思っていなくて、なんだか追体験しているかのようだ。



「パパも動いてるの感じたいなあ〜べびちゃーん」
『べびちゃん、気まぐれだからねぇ』
「多分やけど俺、胎動感じれたら嬉しくてホームラン2本は打てる」
『それはじゃあ動いてもらわなきゃだ(笑)』
「パパの成績のためにもお願いしますよ……」
『あっはっは！(笑)』



もう面白くてイヤ(笑)



.
.



「でもこっちも画数的にはええよな」
『画数だとこっちの方がいいね』



妊娠期間も残り４ヶ月を切った。最近の我が家の話題はもっぱら名前について。我が子への最初のプレゼントだから、家を建てると決めた時よりも真剣に話し合ってる。


「うーーーーん」
『性別が分かんないと倍悩むね』
「そうやねんな〜」


実はまだ性別がハッキリと分からなくて。先生曰く、なにも見えない！と。まあこの際だから、最後まで分からなくてもワクワクして楽しいかな、とは思う。勇人も同じ意見なようで、積極的に性別を聞くのはやめようと夫婦で決めたのだ。

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