・ ページ19
『ん゛〜〜……』
「痛いな…痛いよな…」
眉間に寄った皺と、呻き声とがその痛みの辛さを想像させる。ふ〜っと、口から息を吐き痛みをなんとか逃がそうとしている姿に胸が苦しくなる。これ、マジでずっと続くん?見てる俺まで辛いわ、もう。
『いま…何分おき…?』
「15分くらいやな」
『ふ〜〜……キツ……』
「落ち着いた?水飲む?」
『ウン……』
それから今までの陣痛の間隔が10分になるまで待って、朝方ようやく入院することに。
だけどそこからが長かった。「初産婦さんだから、時間かかるかもね〜」と先生からは入院した時点で言われていたけど、その通りに、陣痛開始から約16時間。
待ち望んでいたその瞬間がやって来た。
.
.
「おめでとうございます!お母さん、お父さん!ほら、可愛い女の子ですよ〜!」
痛くて苦しくて、もう死ぬんじゃないかと思うほどに辛かった。鼻からスイカなんてもんじゃないじゃん!って悪態をつきたくもなったけど、
でも、「ほぎゃあ」って弱々しくも力強く声を上げる、しわくちゃな顔をした我が子の姿を見た瞬間、そんなことどうでも良くなった。
「……っありがとうなあ、ほんまに、ほんまにお疲れさま」
私の手を握りながら目を真っ赤にして、そう伝えてくれる勇人。ごめんね、きっともうほとんど記憶にないけど、たぶん八つ当たりもしたと思うし、勇人もここまでキツかったと思うのに、本当につきっきりで支えてくれた。
『こちらこそ、ありがとう…っ』
助産師さんが、私たちの間に処置が終わった我が子を連れてきてくれて、ふたりで顔を覗き込む。
『ふふっ、しわくちゃ』
「でも可愛い。世界で2番目に可愛い」
『…2番目ぇ?』
「1番はAやで、もちろん」
『……(バシッ)』
「イテッ(笑)」
私たちふたりのやりとりをそばで聞いていた先生は「仲の良いパパとママで良かったね〜」と娘に向かって笑いかけてくれる。
本当、嬉しいけど、恥ずかしいからやめて欲しい。
そんなやりとりをしていると、小さな指がきゅっ、と私の指を握った。私はきっとこの日の、この瞬間の感動を、一生忘れることなんてないんだろう。
小さな小さなこの奇跡を、私の一生をかけて守っていくと誓うよ。
「……女の子やな」
『うん。ふふ、女の子だぁ』
女の子だったらこの名前、と実は数日前に決まったばかり。顔を見ても、やっぱりこの名前がしっくりくる。
「決まりやな、ぴったりやん」
勇人もそう思ってたみたい。
1125人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さゆり(プロフ) - ありがとうございます!完結おめでとうございます!終わってほしくないですが😂これからも見返します🎵 (3月13日 23時) (レス) @page33 id: c3a1464b6f (このIDを非表示/違反報告)
みゆち - 淑女の憂鬱のランキング探してもないんですけど、抜けたんですか? (2022年5月17日 18時) (レス) id: bad0598a3b (このIDを非表示/違反報告)
りこ - この作品は何回読んじゃうくらい大好きです❗️最新大変だと思いますが、頑張ってください。応援してます (2022年3月27日 22時) (レス) id: 2a6ba116e5 (このIDを非表示/違反報告)
みゆち - 携帯では小説読めないんですか? (2022年1月6日 19時) (レス) id: fcfb923edf (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 初めまして。勉強の息抜きに見始めたらハマってしまいました!「ず」からはじまるアカウントでフォローさせていただきました。よろしくお願いします! (2021年12月26日 14時) (レス) @page25 id: f3167f841a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハナ | 作成日時:2021年2月1日 18時