指に触れる愛が、３

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『あとは出すだけ、やね』
「そやなあ、いよいよ、やな」



両家の顔合わせや、関係者への挨拶も無事終えて、婚姻届も不備がないように書き終えて、結婚式についてはまだ打ち合わせが残っているけど、結婚に向けての準備は粗方終えて。

ファンのみんなへ向けたメッセージも書き終えて、本当にもうあとは婚姻届を提出するだけ。



「あっという間やったなあ」
『ね』



芸名として、Aという名字はそのまま使うけれど、これからは坂本という名字で、坂本Aというひとりの人間として人生を歩んでいくのだと思うと、ほんの少しだけ寂しいけれど、でもやっぱりこれからに対するワクワクの方が大きくて。

自分だってトレーニングやら何やらで忙しいのに、なんなら私よりも楽しそうに結婚式の準備を進めてくれる勇人を見て、この人で良かったと改めて感じる。


私を支えてくれるこの人を私も支えていきたいと、一度目のプロポーズをしてもらったあの日、決意して、勇人には言っていないけれど、実はアスリートフードマイスターの資格を取っていた。別に、栄養バランスを考え徹底した食事を作ろうとは思っていないけれど、勇人が食べたいと言ったものを作るときになるべく栄養がとれるような食事が作れればいいなと思ってアスリートフードマイスターという資格に挑戦したのだ。

唯一このことを知っている柚ちゃんには愛ですね、と言われたけど、その通りだ。彼への愛がなきゃそんなことやらないよね(笑)でも、そうやって彼のために何かに挑戦出来ることが幸せだし、 この先もそうでありたいと思う。



「ん？なに？」
『んーん、なんでも？』
「なんやねん〜(笑)」



この人と一緒に、生きていくんだなあ。
…幸せだなあ。

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