隣のCafeのお嬢さんが愛されています

ヒーロー？いやいや、悪党だい ページ38

･





客を知らせるベルは、
朝から嫌な人を呼んだらしい





「よーA！」

「...........お出口、後ろでございます」

「お前な、その反応はねぇだろ？久々っつーのに」





別に久々でもなんでも、
アンタに会いたかったわけじゃない





「で、いつものは？」

「.....おかえり、伸之」

伸之「たでーま、A」





鈴木伸之

ご存知の通り俳優業をしている
そう、彼である




関係性としては...昔馴染み？

というか上京してからの付き合い
唯一、気兼ねなく居られる奴





伸之「やー、マジで事務所の隣だし、(笑)」





これこそ運命じゃね？
なんて口にするソイツは相変わらず大きい





「.......っえ、待って。事務所の隣、？」

伸之「おう、隣」

「アンタどこの事務所だったっけ」

伸之「や、だから隣、LDH。
あれ、昨日HIROさんに会ったんじゃねぇの？」


「.....嘘でしょ...」





豪快に笑う伸之と
カウンターに項垂れるわたし

対照的な2人の雰囲気はそれでも和やかだ





伸之「あ、珈琲よろしく」

「はいはい、いつものね」

伸之「...誰にも飲ませてねぇだろうな？A」

「これ作るのめんどくさいから作ってない」





昔、珈琲を作っていた別のお店で
わたしが初めてブレンドしたこの珈琲が

この男のお気に入りでお決まり



伸之しか頼まないし、
頼ませようとしないのは...何故だか





黒に近い色の珈琲を、
この男が家に置いていった専用のカップに注ぎ




「はい、味わって、飲んでね」

伸之「お前さ、いつまでそれ言うわけ？(笑)」

「アンタ飲むの早いから」





まったく...作るの大変なんだから
少しは落ち着いてゆっくり飲みなさいよ






「で、なんの話があって来たの？」






カウンターのそっち側とこっち側に
向き合うように座って

わたしは電卓と家計簿を触りながら





男の言葉を待った









･

その男、昔馴染みにつき→←サボテンの棘には何もない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す