１─初期刀をお選びください ページ2
「俺は山姥切長義
俺こそが長義が打った本歌、山姥切だ」
少し違う感覚
既に顕現されて、聚楽第の監査官の時のような感覚はない
初めて、人の身を得た感覚だ
「とっても美しいですね！
山姥切長義…ですか
よろしくお願いしますね、“まんば”！」
目の前に居たのは人間だ
まだ若い女性…
その割には美しい霊力を感じる
「……出来れば、そのようには呼ばないで欲しい」
あの呼び名は、俺が何度も憎んだ奴が呼ばれていた名だ
俺には、屈辱でしかない
「そう、ですか…
それで、“本歌”とはどういう事です？
もう一人、山姥切が居るんですか？」
「…俺は何振り目の刀だ？」
「一振り目ですよ、初期刀です」
そんな馬鹿な…
俺は聚楽第の評価に応じ、本丸へと出向かれるはず…
「山姥切国広という刀は居ないのか？」
「そんな刀の報告は受けておりませんが…
その刀も、“山姥切”なんですね
もしかして、本歌ってそういう事なんですか？」
この審神者の目に嘘偽りはない
つまり、本当に俺の写しである“山姥切国広”は居ない
そして、俺が初期刀であるということ
どういう事なんだ……
『だって、これが貴方の望んだ世界でしょう？』
此処に来る前と同じ声が聞こえた
…お前の仕業、という事か
『山姥切国広が居ない世界
貴方が本歌、初期刀という認識がある世界
そんな世界に行ってみたかったんでしょう？
暫く、この世界で過ごすと良いでしょう
何れ、山姥切国広も現れます
貴方も極となる事があるでしょう
その間に決めればいい、この世界で本当に良いのかと─』
声はまた消えた
つまり、聚楽第が行われるまでが
俺の決断の猶予という事か
「“主”
質問があるならいくらでも答えよう
本歌の事、山姥切国広の事、俺の答えられる限りの全てを」
俺は主となる者に笑みを向けた
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