鶴が百十一羽 ページ1
彩音side
「俺は不動行光…」
彩「待っていたぞ！」
待ち望んでいた不動行光
私は嬉しさの余りにそう叫んだ
案の定、不動は驚いている
不「ダメ刀が来て、嬉しいのかァ？」
彩「私は嬉しい、此処には前にお前と同じ主だったやつが居るからな」
私がそう言うと彼の肩はピクリと反応した
不「…長谷部も居んのかァ？」
彩「嗚呼居るぞ、本丸によっては長谷部を知らない奴も居るが、此処に来てくれたのは知っているのだな」
不「彼奴は信長様が命名した刀だからなァ、俺は確かに気に入られてたが、命名したのは他の奴だァ、黒田に渡されてからは心配はしてたんだぜェ？」
彩「お前は優しい奴なんだな」
私が頭を撫でると
手で私の腕を払った
ダメ刀なんか撫でるなとでも言いたげに
そんな風に思っていたら
部屋の外が妙に騒がしい
何かあったのだろうか
襖を開けると廊下には人集りが出来ている
彩「どうしたんだ？」
私がそう聞くと倶利伽羅が顔を真っ青にしていた
倶利伽羅の腕が勢いよく私の手に乗せられた
相当焦っているようだな
倶「国永が…！」
国永がどうかしたのだろうか
人集りの中心を見ると
息が荒く、顔が赤い国永が倒れていた
彩「……！？」
私は急いで駆け寄り体を揺すぶってみる
反応はない、意識が朦朧としているのだろう
こんな時に薬研を出陣に出してしまった自分を恨む
不「なんだァ？」
彩「不動…」
不「薬研から、熱の時の対処法ぐらいは教わったぜ、取り敢えず部屋に運んで布団に寝かせたらどうだァ？」
不動にそう言われ平生を取り戻した
そうだ、私が焦っている場合ではない
主の私がしっかりしなくては……
彩「大丈夫だからな国永…」
安心させるように私は国永の手を握った
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