82─大事だった家族 ページ3
少し、昔話をしようか
ボクは審神者をやっていたんだ
十年近く前かな？
まだ、小学生くらいだったから
ボクの初期刀は歌仙兼定
初鍛刀は小夜左文字だった
とても、懐かしい記憶だ
けれど、そんな平和な本丸に見習いが来たんだ
その時はまだ、見習い制度が出来たばかりで
『乗っ取り』なんて、誰も知らなかった
見習いはボクより歳上の美人な女性
でも、暴力的でね
事あるごとにボクに暴力を奮った
けれど、『審神者が死ぬと刀剣男士は刀に戻る』
それが昔は普通だった
今はその点が改善されてるけどね？
そして、『刀剣が折られれば審神者の霊力が減る』
これも改善済み
昔は不便だろう？
見習いはボクの目の前で刀剣を折った
その度にボクの霊力は減っていく
そして、精神的な苦しみを味わう
小夜左文字・燭台切光忠・和泉守兼定・歌仙兼定・三日月宗近
この五人は最後まで折れなかった
ボクが壊れる前まで、一人を除いては──
見習いはボクの目の前で初期刀である歌仙兼定を折った
彼はボクの霊力が多く流れていた
そんな彼が折られたのだ
勿論、精神的にも壊れてしまう
霊力が少なくなり制御出来なくなったボクは
政府に引き取られた
その後、ありもしない記憶を埋め込まれて
『言祝』と言う名前で生きてきた
残った四人は別本丸に引き取られたらしい
元気かどうか心配だ
それとね、ボクには兄が居るんだ
優しくて、強くて、頼もしくて、心配症な
ボクの誇るべき兄が──
今は政府で働いているらしいけど
どこの部署かは知らない
いつか、会えるといいなぁ……
未だ霊力が足りていない
お陰で、足元が覚束無いし
立つ度に目眩がする
不便だな……
そう言えば、あの検非違使の娘と仲良くならないと……
でないと、『僕』に怒られるからね
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