最期の戦#14 ページ24
塚内さんが仕事に戻るとやけに大きな部屋が目立った。
随分立派な個室を用意してくれたものだが、私の通帳に払える金額があるだろうか。
白を基調とした部屋は私の虚無感を増幅させる。冷房の風が乳白色のカーテンを撫でた。
「起きてるかい？」
扉に目を向け、少し視線を落とすと、我が養護教諭の先生がいらっしゃった。雄英も大変な時期だというのに申し訳なく思う。
そして彼女は手慣れた様子ですぐに治癒を施してくれた。
「事情は聞いちまったよ。本当は無理しすぎだって叱ってやるのがいいんだろうけどねぇ……
あんた、今すぐ元気になれとは言わないがねぇあんまり気に病むんじゃないよ」
そう言って私の頭を小さな手が撫でた。リカバリーの倦怠感と手の暖かさに私の意識は再び吸い込まれる様に消えた。
・
看「あら、轟君。今日も来てくれたのね」
轟「どうも」
看「朗報だよ。透見さんね、今朝目を覚ましたの！今病室でリカバリーさんに治癒して貰ってる。もうちょっと待っててね」
轟「！そうですか」
看「んふふ、嬉しそうだね」
轟「え？」
看「轟君、意外と顔に出やすいタイプなのかな？」
轟「……そう、なんですか？」
看「質問で返すか。轟君て天然さんなのね笑」
そんな会話をしたのが5分前。
顔に出やすい、なんて初めて言われた言葉だ。寧ろよく言われるのは、何を考えてるか分からないだ。
それほど俺はその報告に安心したんだ。
今はAの居る3階のロビーで缶コーヒー片手に座っている。最初こそ喜んだものの1秒1分と待つうちに無垢な喜びは少しずつ他の感情に汚されていってしまう。
会いたいと、話したいと思うほど、会うのが怖くなって何を話していいのか分からなくなる。何もできなかった俺にどんな言葉をかけてやる資格がある？
考えても答えが見つかるわけもない。俺はコーヒーを一口含んだ。その苦味も複雑な心境に混ざり込んでくるようだった。
病室のドアが開き、小さなシルエットが見えた。リカバリーガールが俺に目を留めると申し訳なさそうに眉を下げた。
リ「あの子に会いに来てくれたんだね。すまないねぇ。治癒を施してやったらまた寝ちまってねぇ。さっき起きたばっかだってのによく寝る子だよ。
あの子のこと、頼んだよ」
轟「………はい」
何も守ってやることができなかった俺に、何かを守ることができるのだろうか。
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ピポ助(プロフ) - 今後新たな作品を書くつもりがありましたら、頑張ってください！！ お気に入りの作者に追加しておくので！書いてくださったらすぐ飛んでいきます！！！ (2019年7月31日 20時) (
レス) id: 4111e46406 (このIDを非表示/違反報告)
ピポ助(プロフ) - コメ失礼します！！ めっちゃ！感動！！しました！！！！！ お母さんの話がこの作品の山場？だと思いますが最後の誕生日会もちゃんとA組みんなが関わっていて素晴らしいと思いました！！ 書ききれないんで上に続きます！ (2019年7月31日 20時) (レス) id: 4111e46406 (このIDを非表示/違反報告)
いくと(プロフ) - ルーナさん» コメントありがとうございます！感動していただけましたか！そう言っていただけると作者としては本当に嬉しいです！この先も全力で泣かせにかかりますので何卒箱ティッシュのご用意を( (更新頑張ります！！ (2018年6月21日 18時) (レス) id: 12992f1ebb (このIDを非表示/違反報告)
ルーナ(プロフ) - 夢主と夢主のお母さんの話、凄い感動しました！涙が止まりません(泣)これから夢主がどうなるのか…続きが気になって仕方ないです！これからも更新頑張って下さい！ (2018年6月21日 0時) (レス) id: 6c368ece55 (このIDを非表示/違反報告)
いくと(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます！！私も今電車内で涙目です(コメントいただけた喜び)拙い文章ではありますが、期待に応えられるよう頑張ります！ (2018年6月16日 7時) (レス) id: 12992f1ebb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：[いくと] | 作成日時：2018年5月20日 10時
