最後の戦#9 ページ17
目が眩む。
体が吹き飛ばされるなんて今日が初めての体験だったのに、もう慣れてしまった。
いつのまにか役目を終えたかのように“私”の個性は使えなくなった。
朱い息を吐き、僅かな力を絞り出して立ち上がろうとした。
重い。今日この時ほど重力の存在を恨んだことはなかったはずだ。
恨もうが抗おうが、重力は等しくかかるもの。私はなすすべなく地面に引かれた。
頭から流れる血が目に入りそうで目を閉じたくなる。きっとここで目を瞑ったら私の意識は吹っ飛ぶだろう。私は2、3度瞬きをした。
使える左腕と両足で地面を這いずる。割れたコンクリートの匂いと鉄の匂いが混ざり合う。
先程“私”に言われたことを思い出した。
無様ね、という一言。
全くだ。今の私はどれだけ無様だろうか。酷く最低な気分だ。
やっとの思いでお母さんの側まで来た。重たい上半身を息を切らして持ち上げる。
お母さんは目を閉じていた。
その腹には私が突き立てたナイフが刺さったままだ。
今救急車が来て、腕のいい医者が処置をすれば辛うじて助かるかもしれない。このナイフを引き抜けばもう助からないだろう。
__あなたが私を終わらせて
脳裏に浮かぶあの手紙の一行。母が残した最後の願い。私には叶える義務がある。
ナイフに手をかけると同時に鼓動が走る。
これを抜けば、人を殺せば、もう元には戻れない。ヒーローに憧れた夢も、ヒーローを志して並んで走って来た仲間も全部夢のように消えることだろう。
もし仮に、雄英が私を受け入れたとしても、将来、誰が血に塗れた人殺しヒーローに助けを求めるだろう。
それでも、これは私のなすべきことだと思うから。
最初で最後の酷すぎる親孝行だと信じているから。
来世があるなら、もっともっとしてあげたい。
私はぐっとナイフの柄を握る手に力を込めた。
これで晴れて私も殺人者の仲間入りだ。
「………ぁ…A……っ……」
さっきと変わらない声紋。私の名前を呼んだだけ。
それでも、分かった。
『……お母、さん…？』
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ピポ助(プロフ) - 今後新たな作品を書くつもりがありましたら、頑張ってください！！ お気に入りの作者に追加しておくので！書いてくださったらすぐ飛んでいきます！！！ (2019年7月31日 20時) (
レス) id: 4111e46406 (このIDを非表示/違反報告)
ピポ助(プロフ) - コメ失礼します！！ めっちゃ！感動！！しました！！！！！ お母さんの話がこの作品の山場？だと思いますが最後の誕生日会もちゃんとA組みんなが関わっていて素晴らしいと思いました！！ 書ききれないんで上に続きます！ (2019年7月31日 20時) (レス) id: 4111e46406 (このIDを非表示/違反報告)
いくと(プロフ) - ルーナさん» コメントありがとうございます！感動していただけましたか！そう言っていただけると作者としては本当に嬉しいです！この先も全力で泣かせにかかりますので何卒箱ティッシュのご用意を( (更新頑張ります！！ (2018年6月21日 18時) (レス) id: 12992f1ebb (このIDを非表示/違反報告)
ルーナ(プロフ) - 夢主と夢主のお母さんの話、凄い感動しました！涙が止まりません(泣)これから夢主がどうなるのか…続きが気になって仕方ないです！これからも更新頑張って下さい！ (2018年6月21日 0時) (レス) id: 6c368ece55 (このIDを非表示/違反報告)
いくと(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます！！私も今電車内で涙目です(コメントいただけた喜び)拙い文章ではありますが、期待に応えられるよう頑張ります！ (2018年6月16日 7時) (レス) id: 12992f1ebb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：[いくと] | 作成日時：2018年5月20日 10時
