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──｢いつか、三人で人間界を見に行こうね｣
幼い頃、幼馴染と笑って約束した。いつか三人で色々なモノを見に行こう、と。
俺の──鬼族の村は、恵外界から更に森の奥へと進んだ先の、クローバー王国とスペード王国の間の強魔地帯付近にある。
しかし、人間の街に興味が無い訳では無い。煌びやかな城に大きな魔導書塔など知らないものが、見た事ないものが沢山ある。
それを、その約束を、この大きな海を見て思い出した。
結果、俺だけが村を出て、二人はまだ人間界に出たことは無い。けれど……いつか、俺が二人を連れて来たいな、と今改めて思った。
『……元気かな、皆』
ふと、村の皆の顔を思い出して、言葉がもれた。兄に幼馴染、俺を育ててくれた人、ちびっ子達……。最後に会ったのは何時だったか。
この任務が終わったら、一度帰ろうかな、と思いながら大きく背伸びをする。いくら温暖な気候とはいえ夜の海辺は冷える。そろそろ戻ろうと立ち上がった。
その時。
｢あ、あの……｣
『ん……？』
後ろから、小さな声。くるりと其方を向けば、そこには俺と同じくらいかもう少し下くらいか……そのくらいの少女が立っていた。
｢あ……すみません、いきなり話しかけて……。いつもこんな所には人が居ないので｣
『いつも……って事は、ここは君の秘密基地だったのかな、ごめんね。もう行くよ』
｢いえ、寧ろ人が居たのは初めてで嬉しくて……その、良かったら少しだけ話し相手になってくれませんか？｣
白いワンピースを揺らして、岩場の方から砂浜へと降りてくる。氣を読んでみれば嘘は無いようだから、俺は再び砂浜に打ち上げられた大きな流木の上に腰を下ろした。
『嗚呼、俺暇持て余してたから、こっちこそお願いしたいな』
｢わ……有難う御座います、へへ……。あ、私、クリスと申します。貴方は？｣
『俺はハク。宜しくね、クリスちゃん』
大きな流木の隣にちょこんと座ったクリスちゃんに名乗れば、｢はい、宜しくお願いします｣と微笑が返ってきた。
｢それで、ハクさんは何故ここに？旅行とか……ですか？｣
『んー……詳しくは言えないんだけど、仕事だよ』
｢お仕事……ですか？｣
首を傾げるクリスちゃんに嗚呼、と頷く。その疑問も最もだろう。ここラクエはリゾート地なんだし。
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作者名：白璢 | 作成日時：2022年1月1日 20時
