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No side
どうして、と。アルの何かの問いにハクの動揺した姿。アルによって遠くに連れられたハクを騎士団員達は何とかして取り返さねばと魔導書を開いた。
遠くに聞こえるアルの声と、どこか不安定なハク。
その瞬間、ハクの身体が揺れ、倒れる寸前。
｢！｣
｢あれは……！｣
現れた光に、目を丸くするアスタやトワ達。黒の暴牛の者であればその正体は一目瞭然だった。
淡く青色の光を放つ雷──ラックの魔法だ。
倒れそうになるハクの身体に触れようとしたアルから守るようにしてバチバチッと弾けた雷。それによって出来た隙に、騎士団長達は一斉に魔法を放つ。
闇、荊、斬撃、水銀。強力なそれらの魔法。これにはアルも敵わぬだろうと皆が思ったのだが。
｢ふふふ……あははは！｣
気でも狂ったのか、笑い声を上げたアル。しかし、彼女は至って冷静だった。
｢あらあら……ハクに当たったらどうするつもりだったのかしら？｣
倒れたハクを足元にもたれかからせるアルは、何かの魔法を唱え──全ての攻撃を、地に沈ませたのだ。
｢え……！？｣
｢団長四人の魔法を……防いだ……！？｣
｢なんだあの魔法……！｣
ざわめくフィンラルやゴーシュ達を背に、再び攻撃を仕掛けようと動く団長達。
だが、アルには既に戦意は無かった。
｢随分せっかちだこと……｡安心して？私はもうアナタ達に用はないから｣
｢ア？ウチの団員やられてはいそうですかって引き下がれるかバカヤロウ｣
そう言ったヤミは、正確にアルだけを捉え、刀から黒い刃を飛ばしたが、結果は同じだった。
アルの目の前で、いきなり方向を変えて、今度は洞窟を抉る。大きく音を立てて崩れる岩が砂埃を舞上げ、影になっている所だった事もあり奥の方がどうなったのか良く見えない。
相変わらずの表情なアルは小さく｢そう……｣と、ヤミの返事には対して興味も無さそうに応える。
｢別にアナタ達に引き下がってもらうまでも無いわ。アナタじゃ……私を捕える事だなんで出来ないでしょうから｣
余裕な態度を見せたアル。その言葉通り、今の魔力量ではおろか、万全の状態でも彼女を相手にするのはキツいだろう。
だがしかし、騎士団長がそんな言葉だけで大人しくしている訳にはいかない。アルとの距離を詰め、近接戦に持ち込もうと刀を強く握り直したのだが。
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作者名：白璢 | 作成日時：2022年1月1日 20時
