君の背． ページ10
『…私が綺麗って言ったの、って、
雨のことじゃないんですよ』
水溜まりを踏んだ音が響く。
真っ暗で誰もいない。
そんな兵舎の外を、私を背におぶったリヴァイさんが歩いていた。
「…紫陽花か？」
『…綺麗、ですよね』
「あぁ…」
『でも…違います』
「…あ？」
きっと今、あなたは眉間に皺を作っていて、私はそれを思い浮かべている。
「……。じゃあ何だ」
『考えてみてください、ふふっ』
「……はぁ」
そしてなんだか困ったような顔を。
私は嬉しくって、あなたの背中に抱えられているままで笑う。
ゆっくりと歩き続けながら、呆れたのかリヴァイさんはまた溜息をついて。
『いつか…答え合わせしましょ』
「……」
ぱしゃっ…。
『？』
「……」
水溜まりを踏む音が止む。
不思議に思っていると、リヴァイさんがこっちを振り向いた。
「…なぜ、そんな顔をする」
『…え？』
「なんって面だ…なぁ？」
『……っ』
足を止めたままの靴に、水が滲んでいくような気持ち。
「…酷い表情だ」
温かい背中におぶられているのに、体が震える。
寒気に嬲られてるみたいに。
「…冷えたか」
リヴァイさんは曇る夜空を見上げて、その先の宙からは雨粒が落ちた。
「…部屋に戻ろう」
『……なにも
…聞かないんですか…？』
「……」
震えながら
できるだけ気持ちを隠して静かに、そっと、あなたの背に縋りついた。
「…雨のせいだ」
『…え…』
「お前がクソみてぇな
『……』
「…
『…っ』
見つめられたまま。
見つめたまま、なにも答えられなくなったのは図星だったから。
怖くて仕方のない雨雫があること―…
リヴァイさんの部屋に戻った後、
冷たくなったベットの上に体を寝かされ、リヴァイさんは私の髪をなでた。
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朝焼け
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作者名：氷飴 | 作成日時：2018年3月8日 0時
