夜半． ページ9
『…え？』
まるで夢のような話。
リヴァイさんが言った言葉を、本気で信じてなどいなかったのに。
『…本当に行くんですか…？』
今朝のあの言葉から。
あれから日付けが変わり、時計の針が零を過ぎてしばらく経った頃に。
リヴァイさんが私の手枷を解いた。
「…外は嫌いか」
『いえ……意外、なんです。
どう…して……』
「静かにしろ」
ベットの上から解放された私に。
深く被れるフードがついた上着を着せて、戸惑う私の腕を引いて連れた。
部屋を出た時。
『…リヴァイさん』
久し振りに兵舎の廊下に出た。
本当に私は…あなたに閉じ込められていたんだって。実感したんです。
「…あ？」
『嬉しい、です……ふふっ』
「…チッ」
“リヴァイさんは不機嫌に舌打ちをしているのに、なんだかその横顔が微笑んで見えたの。”
『…きれい……』
夜中の兵舎をあなたと歩き。
大胆にも窓から外に抜け出してみれば、冷たくて温い雫が私達の肌に降った。
「…梅雨。だからな」
傘もなしに繋いだ。
『…どこまで行くんです？』
絡めた指先を、あなたがまだ連れるから。
「…どこがいい」
『………。
…“街まで”、いいですか？』
「…難しい」
もちろん。
そんなことは無理だって分かっていたけれど、靴があったから…少しだけ期待してた。
『…座りたいです』
拗ねたように
『どこか……』
「…どこだ」
『カタツムリがいないところ…』
「…この辺は見ないが」
結局、なんだかんだ探して。
見つけた綺麗な場所に座る時は、上には錆びれた屋根まであった。
「…いるか？」
『……いないです』
「…そうか」
あのニョロニョロ動き回る姿を、私は幼い頃からずっと恐れてる。
「………」
あの姿を思い出して青ざめていたら、リヴァイさんが髪をなでてくれた。
「…そんなに嫌いか」
『きっ嫌いです……。
巨人の方がいい…二度と会いたくないっ！』
「…そ、そうか」
思わず強ばった声を張り上げると、少し戸惑いながらの驚いたような顔。
…嫌いなものは嫌いですから。
そんな私を見てどこか楽しそうな顔をしてる、リヴァイさんに、私は気づかないまま。
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朝焼け
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作者名：氷飴 | 作成日時：2018年3月8日 0時
