頬. ページ7
「……なぜ泣くんだ」
『………』
「返事をしねぇか、A」
『……泣いてません』
「なら、お前のこの湿気た頬はなんだ?
なぁ……おい、顔を逸らすな」
はぁ……悔しいな。
なにがって。それは、私にはリヴァイさんを避けたくたって、避ける場所もないこと。
繋がれた腕で膝を抱え込んだって、せいぜいベットの隅に行けるだけで。
「…梅雨みたく湿気ちまうぞ」
そんな場所で膝に顔を埋めたって、リヴァイさんが隣に来れば…なんの意味があるの。
否。なんの意味もない。
涙を掬われるだけで、彼と私の中で増す想いから逃げることなどできないのだから。
『いいこと教えてあげます、リヴァイさん』
「……なんだ」
『ですから…手枷、解いてくれますか?』
「………」
嫌な顔をしながらも解いてくれる、そんな彼に複雑に抱いた、期待と不安ごと。
「……なにをしてる、A」
部屋の別の隅まで歩き、また膝を抱えて座り込んで、つまらな気なリヴァイさんを見上げた。
「そんなに…隣が嫌か」
『…怒ってるだけです。悪いですか?』
「……怒ってる、だと…?」
『そうです…怒ってるんです。
リヴァイさんの嫌がること、したいくらい』
「…そうか。お前にできるか?」
座り込んだ私の前に、面白そうな顔をしたあなたが膝をつき、背の壁とあなたに挟まれた。
無力な私には無理だと思いますか…?
それでも私は、“人類最強”だと謳われるあなたの
『…エルヴィン団長のいいところとか、私が過去に付き合った男性の話でもしましょうか』
「……そうか。
なら、俺もお前の嫌がることをしよう」
『………』
「痛い思いをするのはお前だが、それでもいいなら、好きな方を選べ」
そんなあなたの薄い笑みが壊れていった理由、私が選んだのは、心底微笑むこと。
『リヴァイさんがいなくて痛いより、リヴァイさんがいて、痛い方が……ずっといい』
縋るように抱きついて言った言葉が、どこまであなたに届くか、例えば届かないとしても。
『……独りに、しないで』
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作者名:氷飴 | 作成日時:2018年3月8日 0時