綺麗に欺いて. ページ22
恋だの愛だのくだらない
それからこんな世界には、“自由”なんてものは無い。
ずっとそう思っていた。
幼い頃からずっと、そう思い、膝を抱えるようにしてた。
自由なんてなんて綺麗事なの?
けれど子供心はそんなこと否定したくって、
膝を抱えた私の肩を叩く。
『そんなことないよ、きっと…』
なんて無邪気な私が言えば、
自由・愛反対派でもない、肯定派でもない他の私ができて、優しく私を諭しながら。
『そっちはぬかるんで危ないよ』
って手を出した。
『 だからさ、ちゃんと捕まってて 』
『…痛いのは君も嫌いでしょ?』
『うん……』
…だ、けれどね。
手を伸ばした途端、思い出したの。
回避派がきょとんと待つ中、肯定派の私は手を伸ばしきれずに。
『…でもね、縛られるのも嫌いなの』
『…どっちつかず』
反対派は冷たく呟いた。
『…もう無くたっていいじゃない』
そんな時、新しい誰かが現れた。
もういっそ、縛られてよう?
縛られて求めていればいいじゃない。
矛盾だらけの世界に住む、私のことをあなた達も欺いて、くだらなく縛って。
だって私は皆、いつの日か壊れてしまう出来損ないの心臓なんだから。
けれどもしね、くだらない世界が終わる前、
もしも私達を拒んでくれる、そんな誰かと出会えたのなら、その時は――…
そして、
私達の目にはいつの日か
自由の翼に焦がれたあなたが映った。
けれど自由がゆえに苦しみ
踏みにじりながら
綺麗な汚れた翼で、屍の上に立つあなたが。
『…あぁ彼なら』
『私でも愛して、
愛し方がわかるかもしれない』
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朝焼け
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作者名:氷飴 | 作成日時:2018年3月8日 0時