鍵つき手帳． ページ3
朝食の後のことでした。
繋がれた私の傍ら、リヴァイさんはデスクから出した手帳のページを無残に破り捨てていた。
私はそんなあなたに問いかける。
『…どうして捨てるんですか？』
「必要がなくなったからな」
『…どうして必要なくなったんですか？』
「…お前がここにいるからだ」
『……なにを、書いてたんですか？』
破られた紙がゴミ箱にポイされている。
バラバラになって大粒の雨のように落ちていくそれに、もはや同情もどきの感情を抱いた。
「…愚痴だ。
お前が手に入らないこと、俺の傍らにいなかったこと……他の野郎が鬱陶しいって、文句だ」
『……ふふ、ありがとうございます』
「不気味なくらいに聡いか、バカなのか？」
『聡いのとバカ、どちらがいいですか？』
「……バカの方がいいんじゃねぇか？
聡いよか可愛気がある」
『じゃあ…バカな女になりますね』
微笑んだ私に、あなたは瞬きした。
あなたの望む私になります、だから……私はあなたを望んでいても、いいですか…？
その紙のように、破いても構いません。
『ところで…リヴァイさん』
「…なんだ？」
『質問じゃなくて、お願いです』
空いた手であなたに手を伸ばした。
リヴァイさんの指先に触れた、私を繋いでいる手枷が鈍い音を鳴らした。
『…その鍵つき手帳と、ペンが一本欲しいです』
眉を顰めて私を見つめる。
胸に空洞ができたように通り抜けるなにかを感じながら、ちゃんと理由もあなたに話す。
『リヴァイさんが部屋にいる間はいいですけど…そうでない間は、なにもできなくて暇です。
その暇潰し代わりに、日記でも書きたいです』
「……それだけか？」
『できたらその他の暇潰しに、リヴァイさんの本棚も漁ったりしてみたいです』
「………」
『……逃げませんから。
私が変な素振りをしたら、好きにしてください』
「……はぁ」
リヴァイさんは何度か溜息をついた後、数10枚の紙が残った手帳と、ペンを与えてくれた。
『やっぱり優しいですね…リヴァイさん』
「気紛れで、それもやめちまうかもしれねぇが」
『…その時はその時です。
ふふっ……嬉しいです、リヴァイさん』
初めて解かれた手枷の痕は、私に許された僅かな自由の痕跡。
ラッキーアイテム
朝焼け
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷飴 | 作成日時：2018年3月8日 0時
