Alice blue . (ページ16)

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籠出．ページ16

#Aside

「今晩、兵舎を出るぞ」

『…え？』

朝食の後――…

リヴァイさんから唐突に告げられ、私の手から紅茶を混ぜていたティースプーンが落ちる。

かしゃんと軽く金属の音が鳴った。

『……。
…今…何と…？』

「今夜、兵舎を出ると言った」

『…兵舎を出るとは…？』

「……いや。出るじゃなく去る(・・)、だ」

『…え……？』

リヴァイさんはいつもの表情でその睫毛をそっと伏せる。

『…どういう、ことですか…？』

「…なぜそうも驚く。そのままの意味だ」

『リヴァイさん…っ！』

「……」

そして、どうしてかなんでもないように笑った。

“６月のある日…”

“昨日は初めてリヴァイさんと兵舎の中から抜け出した。”

“そして今朝は…私の髪をなでてくれるリヴァイさんの手で目を覚ました。”

“嬉しかった。”

“けれどそんな優しさの最中、彼の口から突然の爆弾発言が”

こ、ん、ば、ん、へ、い、しゃ、を、で、る。

『……』

リヴァイさんの唇から紡がれた言葉は、確かに、確かにそう聞こえた。

『…それは…。
人類最強の兵士だと謳われる…リヴァイさんが、ちょ、調査兵団を…抜けるということですか……？』

「そうだ」

『…え？……嘘…ですよね？』

「本当だ」

『…。あれれれれ…？』

「…おい」

思わず手帳に走り書くままに固まってしまう私。

…に、それを背後から覗くリヴァイさん。

「…インクが滲みすぎだ」

『あっ…』

「…。文字になってねぇぞ」

『…わー文字になってなーい』

「……」

ぱちんっ。

リヴァイさんのデコピンをくらう。

『っ！？痛いです…！』

「痛いわけねぇだろ、これくらいで」

『あなたは人類最強の兵士ですよ…！？』

「…それ(・・)も今日で終わりだ」

『ッ…』

その言葉のまま抱き寄せられる。

『っ……リヴァイ兵長(・・)』

「…そうは呼ぶな」

『……』

「……」

『…リヴァイさん……』

あなたは少し哀し気に、切な気に、鈍く淡くなった瞳を閉じた。

それは私が最後に見たそんなあなたの……リヴァイ兵士長(・・・)の本音だったんです。