Alice blue . (ページ14)

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深淵．ページ14

『…リヴァイ兵長』

見かける度お前はそっと笑った。

それは今にも消えそうな声だったり、
嫌なくらいに泣きそうな声だったり――…

寧ろバカみたいに無邪気に、

それなのに静かに、変に微笑むこともあった。

それはお前にとって最後となった、あの壁外調査の日もそうだった。

急な豪雨と蒸気が辺りを包む。

人とそうでないものの死骸の中、お前はただ突っ立っていた。

自らの命を狙う存在を気に留める様子もなく、ただ静かに俯いたままで、

『…して ……なか…の』

爪先に散った赤に、お前は呟いていた。

「…ッ、A…っ」

『……』

雨が、散りばめられた血を流した。

立ち込める蒸気と、人とそうでないものの溢れるような死に囲まれ、

虫の息のAを抱き抱えていた。

『…兵、長…』

それでもいつもと同じよう、

今までと同じよう静かに、なんでもない(無邪気)なようになんか微笑んだりした。

死にかけた掠れた声なんかで。

…なぜそんな風に笑ってる？

俺はお前を

どこかここじゃない場所で押し殺して(隠して)しまいたい―……

初めてハンジが、お前を連れた時

その後日ハンジはお前のことを「実はあの子…雨が好きなんだよ」と唐突に話した。

「…あ？」

「いや、なんかね…。
水に溺れたことがあったり雨の日に出かけたがったりする」

「…なんだそりゃあ」

「って、うちのモブリットが言ってた」

「……」

消え入るような声で

いっそ憎く思える程に

気を失ってゆく時も、俺の耳の傍で微か、お前は微笑んで紡いだ。

『…雨、綺麗ですね』

それを聞いた時、そんな話を思い出した。