梅雨とあなた． ページ1
#Aside
「お前は死んだんだ、A」
目が覚めた私に、あなたは淡々と告げた。
ベットの上の私に跨り、溢れる涙を優しく掬って、なにも言えない私にキスをした。
僅かに残った紅茶の味。
「…お前が好きだ。
例えお前がもう、俺を嫌っていても」
『…へい、ちょ……』
「なんだ、A」
『……どう、して…ですか？』
「……」
繋がれた手首が鈍く痛むくらいの、狭い手枷。
あなたはその血を舐め、薄く微笑む。
「……お前は質問できない。
ただ…俺が好きだと。言えばいい」
『……兵長が、好きです』
「…今後はそう呼ぶな」
『……リ、リヴァイさんが…好き、です』
「まぁ…いいだろう」
キスを落とすあなたに、つい目を瞑った。
何度となくそれを受け入れる私に、あなたは悲しそうに、あなた自身を嘲笑うみたいに言う。
「…嫌がらねぇのか」
『…その…好き、ですから…』
「……そうか」
『ッ！ い、たい…っ…！』
あなたは私の体を強く抱きしめ、首筋を噛む。
痛みに涙が出たけど、こんなの異常だと分かってるけど……それでも受け入れる私も異常なんだ。
それでも、それでも…好きだなんて。
「…“ここにいろ”。
いや……違うな、もう。俺から離れられない」
『…したがい…ます』
「…お前は聡いな、A」
『リヴァイさんは…元々結構優しいです、から』
「……バカなだけか」
あなたはまた手枷を取りだして、私とあなたの手首を繋ぐ、そして私の隣に体を寝かせた。
「俺は…もう狂っているか？」
『……』
「……お前がバカなお陰で、まだ狂ってねぇと、一瞬だけ…思ってしまった」
優しく私の髪をなでて。
そして頬に涙痕を流した、見たことのない切ない顔をした。
「おやすみ…」
目を逸らしたあなたの顔を見つめて、ふと紫陽花を思い出した。
梅雨の音があなたの寝息を溶かす。
ラッキーアイテム
朝焼け
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作者名：氷飴 | 作成日時：2018年3月8日 0時
