じゅうに ページ13
松田side
あることを思い出し、一刻も早く話したくてAを探しに来た俺は、資料室の前で立ち止まった。
中からあいつと高木の話し声が聞こえてきたからだ。
「そう言うAさんは、どうなんですか?」
俺が佐藤と組んでいることについて話しているみたいだ、と気づく。
まあ、あいつは警察学校の時からずっと、俺に近づく女に全く興味を示さなかったし、嫉妬なんてしないんだろう。
寂しいくらいに、いつもヤキモチを妬いてハギにからかわれるのは俺ばっかりだ。
そう思った俺の耳に届いたのは、耳を疑うようなAの言葉だった。
『私だって嫉妬のひとつやふたつするし〜』
松「え…」
思わず声が出てしまい、慌てて口を抑える。
松「あいつ、嫉妬なんてしてたのかよ…」
『まあ、陣平の彼女は私だってわかってるし、陣平を信用してないわけじゃないけど』
まさか俺がここにいるなんて夢にも思わないだろうAの声が聞こえる。
『たまに、不安になる。私は陣平に、何かできてるのかなって』
松「…バカかよ」
聞きなれない自信なさげな彼女の声に、思わず普通のボリュームでそうこぼした。
高「…そんなこと」
『たまにだよ?ほら、疲れてたりするとメンタルも弱くなったりするじゃん!』
松「…」
『すごく自分が惨めに見えて、美和子と陣平が輝いて見える』
高「…Aさん、」
高木があいつの名前を呼んだとき、俺は資料室の扉を開けていた。
あいつの隣にいるのが俺じゃないのが気に食わない。
あいつが弱った時、あいつの名前を一番に呼ぶのは俺だ。
勢いよく入った俺の目に映ったのは、驚いたAの顔だった。
『…陣平!!』
高「松田さん!?」
こいつと組みたいと思ったことは、別にない。
仕事とプライベートは別だ、とわかってる。
でも、仕事で何かあった時、すぐにとんで行ってこいつを抱きしめてやれないことが、俺は嫌だった。
ほらな、今だって、悲しそうに笑うAの隣にいるのはおまえなんだ。
おい高木、俺はいつも、おまえに嫉妬してるぜ。
高「ま、松田さん、なんでここに…」
うろたえる高木を横目に、俺はずんずんAに近づく。
資料を抱えて立ち尽くすAの肩を、両手でガシッと掴んだ。
松「てめえ、なにバカなこと抜かしやがる」
『…え、』
松「何が「私は何かできてるのかな」だ!俺がどれだけおまえに、」
高「ちょ、松田さんっ」
高木が慌てているが、そんなの知ったことじゃない。
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蕎麦(プロフ) - あいなさん» コメントありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しいです🥹これからも楽しんでいただけたら幸いです✨️ (11月2日 22時) (レス) id: 6e4712d906 (このIDを非表示/違反報告)
あいな - とても良かったです!陣平ちゃんが好きなのでニヤニヤしました! (10月28日 18時) (レス) id: 1d08598e39 (このIDを非表示/違反報告)
蕎麦(プロフ) - 梨央さん» ありがとうございます〜!これからもぜひ楽しく読んでいただけたら嬉しいです! (10月28日 15時) (レス) id: 27ce214f54 (このIDを非表示/違反報告)
梨央(プロフ) - いつも楽しく見させてもらっています! とても続きが気になります(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク いつでも更新待ってます!頑張ってください! (10月26日 23時) (レス) id: d5d12d933e (このIDを非表示/違反報告)
蕎麦(プロフ) - 魔王さん» 読んでいただいてありがとうございます!これからも更新していきますのでぜひ楽しんでください! (10月26日 22時) (レス) id: 27ce214f54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蕎麦 | 作成日時:2022年12月15日 21時