ストロベリーホーム【Ryosuke.Y】 (ページ38)

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. Ryosuke ページ38

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涼介「……ちょっと、話せないかな」

沈黙が続いていた送迎車で、
俺は運転席に座る彼女に声をかけた。

俺には、Aがいるから。

萌に気持ちがもどるなんて想像もしてないし、
俺の中でそんな気持ちには絶対に蓋をする。

けど、

この事実は見て見ぬふりできなかった。

萌「………話すことなんて、ありませんけど？」

『お仕事の件ですか？』
とハンドルを切りながらとぼける彼女に、
軽く舌打ちをした。

涼介「………本当に萌なの？」

萌「……」

涼介「なあ、答えろっておい」

萌「着きましたよ。

降りてください。部屋までは1人で行けますよね」

冷たく俺を無視する萌に、

なにも言えず固まった。

ドアの窓に
バチバチと雨が打ち付けられる音がする。

…………天気予報、

曇りじゃなかったっけ。

萌「…………山田さん」

涼介「お前はそうやって、

また俺の気持ちをスルーしていくんだよ」

ゆっくりと、
萌の頭が下を向いた。

俺があの時、どんな思いで、

どんなにもどかしい思いで君を手放したと思ってるんだ。

もうあの頃の、

涼介「…………あの日にはもう戻れないんだ」

できることなら、
卒業式をやり直したい。

結ばれる結ばれないより先に、

君との恋に納得の行く終止符を打ちたかった。

萌「…………なんでわかんないの？」

蚊のように小さい声だったけど、
しっかりと彼女のその声が耳に届いた。

つぎの瞬間、
萌はシートベルトを雑に外し、

車のドアを乱暴に開いて、

雨の中外へと飛びだした。

涼介「萌っ！！」

君を追いかけてしまうのは、

『条件反射』なんだ。

待って待ってと、
先々歩いていく君を俺はいつも

心で追っていた。

すくい上げてもすくい上げても、
指の間から滑り落ちていく君を。

涼介「何やってんだよ！！」

掴んだその白く細い手首から、

なぞるように君の顔をのぞき込んだ。

あの日以来の、涙を。