山田くんはこっちを向かない。 (ページ38)

今日:4 hit、昨日:12 hit、合計:102,073 hit

38 ページ38

.

.

A「腹立ちません？

……別に私は先輩の事心配なだけで、

好きとかじゃないのに！

山田くんってあんな極端な人なんですねっ」

昼休みが終わって、
授業も終わり放課後になった後。

たまたま通りかかった大貴先輩を見つけ、
保健室で山田くんの話をした。

なんだかこの話を先輩にするのは違う気がするし、

……さらっと七瀬と喧嘩してることも言っちゃったんだけど。

大貴「へ～？俺の事心配なの？なんで」

A「……七瀬に、嫌がらせされないかなって」

大貴「されないよ？

彼女は、俺にはまず関心すら抱いてくれてないから」

あっさりと笑って言う先輩に、
私は目を丸くして驚いてしまった。

A「……なんで七瀬と知り合いなんですか？」

私の中でなんとなく、
先輩はプレイボーイじゃなくて、

ただの"いい人"であってほしかったから。

かけてみた。

大貴「……七瀬のこと、可愛いなと思ったから」

A「……へぇ」

うちのクラスの男子でも
言うようなそんな言葉。

大貴先輩が言うと少しだけ切なく、

儚く聞こえたのは気のせいだろうか。

大貴「てかさ、Aちゃんやっぱ山田のこと好きじゃん」

A「えっ？」

どういうことだ。

先輩と話してて、
私がそうやって思われるような事言った覚えはない。

大貴「だーめだって、山田は」

A「……」

家で言われた、

あの事が頭の中でグルグルと回転している。

なんで、ダメなの？

悲しい過去があるから？

大貴「……俺との仲を誤解されたくないってことでしょ？

………山田には」

どき、

心臓が鳴った。

図星をつかれた時の独特な
くすぐったい感覚が私を包む。

大貴「好きなんだろ？」

先輩のレーザービームのような視線が、

私を刺激した。

A「……好きじゃ、ない」

……本当は、分からなくなっていた。