実験体にされた天使【改訂版】 (ページ3)

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１話ページ3

リリは普通の女の子ではない。
グレイスフィールドの"ママ"のイザベラはそう聞かされた。
リリを引き取った時には理解が出来なかった。
こんなに可愛い子供になにを言っているんだと。
だけれども、もらった説明書を見るとリリが他の子供と違うことを受け入れざるおえなかった。

『たーっ！』

「よしよし、ちゃんと飲めたわね。」

「あいっ！」

本当に可哀想なリリ。
普通、赤ん坊には支給されたミルクを与えるが、リリはそれに加えて人間の血が必要。
飲まないとリリは死んでしまう。
リリに血を飲ます度に罪悪感を感じて胸が強く締め付けられる。

「偉いわね、リリは。ふふっ。」

私は優しい笑顔を向けることしか出来なかった。

あれから年月は経ちリリは１１歳になった。
毎夜私の部屋に来てテーブルに置かれたコップ一杯程度の血と一口の人間の肉を食べるのは既に習慣になっていた。

その後に少しおしゃべりをしてリリは部屋に戻っていく。

『こんばんは、ママ。』

ドアを三回ノックしてお行儀よくしている。

「こんばんは、リリ。」

『じゃあ、食べるね。…いただきます。』

コップを一気飲みし、生肉を口に放り投げた。
それを渋い顔で噛み締める。

『うっ、ママ、水、水をちょうだい…』

「ええ、わかったわ。」

リリも自分が異常なのは気づいている。
食べているのが人間だったものなんて思いたないのは当たり前だ。

『ふぅ…』

「気分は落ち着いたかしら？」

『ありがとう、うん…』

コップを見つめながら返事をする。
前に話したときに血は口に残るし、肉は食感が気持ち悪いと言っていた。

『どうにかならないかな…もう食べたくない…』

「でも、リリが生きるためには必要なの…」

落ち込むリリの背中に手を置いて言った。
リリには実験にされたことを話していない。

『そうだよね、私が生きるためだよね。仕方ないことなんだよね。』

『あ、』

思い出したように手を合わせた。

『ご馳走さまって言ってなかった…ご馳走さまでした。………次は良い人生を送ってください。』

『そろそろいくね、じゃあ、おやすみママ。』

「おやすみ。」

ドアを閉めて出ていった。
"次は良い人生を送ってください"ね。
どこまでも優しい子なのは確かだ。
子供たちの部屋を回るとリリはいつも泣いている。
声を押し殺して。
罪悪感は日に日に増すばかり。