実験体にされた天使

２９話目 ページ35

リリside

え………？

ママ「だって、あなたは私たちの手助けがないと生きられないでしょう。向こうの世界では食料(にんげん)は用意されていないわ。もしかしたらあなたはエマ達を食べてしまうかもしれないのよ？」

『私は絶対にエマ達を食べない！！！』

ママ「………っ」

ママ(意志が固いわね。制御しようと思っていたけれど、面倒になりそう。)

『それにね、私が脱獄したいのはねエマ達もだけど………』

ママ「？」

『本当はね。私はママとも一緒に逃げ出したかったんだよ……』

ママ「え？」

『私には大切な家族がいる。それは、エマ達もだけど、やっぱり私を育ててくれたママも入っていて………味方だから、敵だからとかじゃないの。』

ママ「リリ…………」

『？』

ママ「私とあなたが家畜と飼育者の関係であったことを知っているのに…それでも私に優しくしてくれるのね……」

ママの目からぼろぼろと涙が流れていた。

ｷﾞｭｯ

『マ、ママ？！』

ママ「今だけは抱き締めさせて…リリ…ありがとう…」

久しぶりに抱き締められた。

とてもあたたかくて、ママは私のママなんだって思った。

ママ「でもね…やっぱり、あなたたちが脱獄をするのは賛成できないわ。」

『そう…なんだね。』

それからは沈黙が続いていく。

時計の針が進む音がやけに気になった。

『ママ、私もう出るね。』

ﾊﾞﾀﾝ

・

私についているこの白い翼。

これは空を飛んで、大切な人達をすぐに助けに行くため。

私の力。

これは、大切な人達を守るため。

大事なものを守れなくて後悔なんてしたくない。

私の道は間違ってない。

そう、私は正しい道を進んでいる。

３０話目→←２８話目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す