16.しっかり ページ17
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まだ、私が12歳だった頃の話。
準備をする私に興味を持った太陽が扉から顔を覗かせる。
『川に水をくみにいくの』
貧しかった私たちには井戸などは無く、川から水をくんでいた。
陽大「危ないよA」
太陽「だいじょうぶです、父さん!俺もひまりもいくから」
陽葵はうーと楽しそうに唸る。
『父さん、まだ陽も完全には沈んでないので、大丈夫ですよ』
父さんは考える素振りを見せたが、分かったと折れてくれた。
その代わりにと父さんは箪笥の奥の方から一本の刀を取り出して私に手渡した。
「困った時にきっと力になる」と。
私は右手に桶を、左手に太陽を、背中には陽葵を乗せて家を出た。
もちろん、刀は腰にささっている。
光希「気をつけて帰ってくるのよ」
陽大「“鬼”が出るから」
『ふふふ。大丈夫ですよ。鬼なんか私がこてんぱにしてやりますから!』
母さんと父さんに見送られて、私たちは家を出た。
川までには距離があるので帰る頃には陽も沈んでいるだろう。
私は桶に水をくむと家路をたどった。
が、しかし。
何かがおかしい。
『太陽。陽葵と一緒にここで待ってるのよ』
太陽は頷くと、陽葵を背負うのを代わってくれた。
ゆっくりと家の引き戸を開けた瞬間、嘔吐しそうな臭いが鼻いっぱいに広がる。
そっと廊下を歩き襖を開けると、ネチョリ、となにかに足を突っ込んだ感覚がした。
恐る恐る下を見ると赤黒く染まっており、四寸先には、肉片が転がっていた。
手だ。
しかも、その手には見慣れた青い腕輪がしてある。
__________ 母が父に貰ったとよく私に自慢してきた腕輪が。
太陽「お、お姉ちゃん.......?」
バッと振り返ると、そこには太陽と陽葵の姿があった。
『来ちゃダメ!戻りなさい!!!』
私の顔が恐ろしかったらしく、太陽が泣き出す。
すると、再びブワッと鳥肌がたった。
?「稀血ノ娘……」
その時、父の話をホラ吹きだと思った私を心底バカだと思った。
腰が抜けて立てない。
太陽と陽葵は泣きわめいている。
太陽「助けて!!お姉ちゃん!!!」
その瞬間ふと父の言葉が脳裏に蘇った。
「困った時にきっと力になる」
私は鞘から刀を抜き、鬼に振りかぶった。
グァ!と鬼は言い、手が消えた。
その瞬間に2人を抱いて山から逃げた。
私も、太陽も、陽葵も、
父さんと母さんのように血なまぐさかった。
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⊃あ゙さん。⊂ - 最高でした!!!面白かったです!他の作品も頑張ってくださいね!!! (2020年5月28日 23時) (レス) id: f0480ad40d (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - 情報ちゃんさん» コメントありがとうございます!獏やっぱりカッコイイですよね〜!!獏めっちゃ人気高いです笑 (2020年2月29日 22時) (レス) id: dca3be50ef (このIDを非表示/違反報告)
情報ちゃん - 最初の顔がいいから冨岡さんが好きって言った悪役の子マジで許さん!実弥さんのがかっこいいやん!とか意味分からん事で怒ってました()とても神作ですよ!獏めっちゃいい奴で惚れた!主様の作品他のも読んでますが最高です!これかも応援してます、 (2020年2月27日 18時) (レス) id: 856e5af163 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - るなさん» コメントありがとうございます!獏はかっこよく書こう!と思って書きました。惚れますよね......./////これからも応援よろしくお願いします。ご愛読ありがとうございました!! (2020年2月22日 22時) (レス) id: dca3be50ef (このIDを非表示/違反報告)
るな - 完結したのしばらく気づかなくてみるの遅くなってしまったことがただただショックです…。ほんとに素敵な話でした。獏にほれそうです。ネタバレになるので内容どこまで書いていいのかわかんないのですが、かまぼこ隊の子達がいい子過ぎますね笑これからも応援してます! (2020年2月21日 15時) (レス) id: e3f988178b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつめ | 作成日時:2019年10月22日 16時