私 が 、し っ か り し な き ゃ 。【冨 岡 義 勇】

19.しっかり ページ20

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太陽「ねぇ、みんな。“獏”って知ってる？」





太陽の問いに善逸くんと伊之助くんは頭にはてなマークを浮かべる。





炭治郎「知ってるよ。夢を喰ってる生き物だよな？」





炭治郎くんだけは知っていて、まるでおとぎ話のような内容だった。





太陽「その獏の成り代わりってやつが居るらしいんだよ」





どうやら太陽が言うには、その獏というのは生き物の方の“獏”じゃなくて、ある男の通り名らしい。



人の悪夢を喰ってくれて代わりにいい夢を見させてくれると聞けば良い奴そうだが、ある人間を昏睡状態に陥れたらしい。





善逸「何だよそれ！良い奴だと思って聞いてればさぁ！」



伊之助「そいつ強えのか！？」



太陽「強いのかは分からないけど、ある程度夢を喰えば元に戻るから、まぁ短い冬眠だと思えば……」





その時は物騒な世の中だ、ぐらいにしか思っていなかったが、まさかここで役に立つとは。



眠ってしまった弟妹にキスをする。





『ごめんね』





私はそう呟いて家を出た。



最近“獏”が出没すると聞いていた町に行く。



もし、昏睡状態になれたら。



誰も傷つかない。



誰も傷つけない。



あの人のことだって忘れられるはずだ。





その刹那だった。





私は日輪刀を抜いて、後ろを振り向いた。





？「ありゃりゃ。このご時世にそんな物騒なものなんか持って」



『あなたが獏？』





そう言うと、男______鬼はニヤリと笑った。





獏「そーだよ。んで、ちょっとそれしまってくれる？俺、鬼だけどキブツジムザン？とは関係ないからさ」





怪しい……が、あの男の名前を言っても呪いが発動しないという決定的な証拠がある為、刀をしまう。





獏「で、お嬢さん。俺が誰だか知ってるんでしょ？危ないよ〜」



『違うわ。あなたに夢を喰われにきたの』





そう言うと、一瞬キョトンとした顔になり、すぐに大笑いし始めた。





獏「アハハッ！お嬢さん面白いね！いーよ。夢、喰ってあげる。お嬢さんからはどぎつい悪夢の匂いがする」





そう言って獏は、私の顔に手をかけた。





獏「本当にいいの？」





私だけに向けたあの微笑みも、





落ち着く低い声音も、





海みたいに深い瞳も、





君の陽だまりのような優しさも、





全部、





全部全部全部、









ここで忘れるんだ。









『はい』





その瞬間、世界は暗転して、夢の世界へと惹き込まれた。





私は





夢の中でもいいから、





大切にされたかったんだ。





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