貴方の隣で。《紫》 (ページ7)

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『私も、教授の授業を初めて受けた時に直感で、同じ様な考えをしていらっしゃると感じました。』

｢ただ僕はそういう分野の専門では無いので詳しくはありません。しかし僕も同じ様に人間関係に悩み、同じ様な取り組みをしていました。｣

何処までも似ていて、

何処までも同じ様な思考回路の彼が

発する言葉ひとつひとつが

納得のいくもので、

まるで自分の内側の声を

代弁するかの様な教授の喋りに、

私は身体が宙に浮いてしまうのでは

ないかとも思った。

｢そうする内に、とある人物と出会いました。彼はとても人当りの良い、まあ、僕達とは真逆の人間です。｣

『はい』

｢しかし彼は話す内に本当の自分を見せてくれるようになりました。我々と同じ様な一面を、です。言葉で表すのはとても難しいですが、君が僕の授業を受けて感じてくれた様な感覚を、彼と出会って暫く経ってから徐々に感じるようになったんです。｣

『…それはつまりどういう事でしょうか。』

教授は珈琲を飲み、

少し間をとってからまた話し始めた。

｢彼、…今はAくん、としよう。Aくんは僕の元生徒だ。彼はね、"隠すのが上手い人間"なんだよ。｣

隠すのが上手い人間。

『例えばよくあるご近所インタビューの、あの人はそんな事する様な人じゃ無いのに、という様な事でしょうか。』

｢そうだね。つまり検証と言うのは、君の周りにもそうやって隠すのが上手い人間が居るのでは無いのか、と思ってね。｣

『それを人間観察で見つけ出す、という事でしょうか。しかし何のメリットがあるのですか』

教授は少し口角をあげて、私の目を見た。

｢これはゲームだよ。｣

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