貴方の隣で。《紫》 (ページ4)

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『濵田教授、お忙しい所申し訳無いのですが、少しお時間宜しいですか』

｢Aさん、でしたか？少しなら構いませんが。｣

『下の名前まで覚えて頂き光栄です。』

｢貴方はとても意欲的で関心します。｣

授業終わりに声を掛けた濵田教授は、

私がこの大学で最も尊敬する人間だ。

『ありがとうございます。教授は先日のニュース、御覧になられましたか』

｢あの、殺傷事件ですか。｣

『はい。あの事件について教授がどの様にお考えになられるのかをお聞きしたくて。』

冷徹教授と呼ばれる彼は、哲学科の教授。

私は彼の授業を受けた時に、

自分と同じ様な血の匂いを感じた。

｢それは哲学科の教授として、ですか。｣

『いいえ、私は知識では無く教授自身の率直なお考えをお聞きしたいです。』

｢そうですね、僕の行う哲学科の授業は、過去の様々な人物が生み出した考え方を提示し、それを元に様々な考察を行う物です。｣

『はい。』

｢ですから、僕自身の率直な意見となると、哲学的な根拠等は存在しませんが…｣

教授は一息付き、私の目に焦点を合わせた。

" 僕はとても興奮しました。"

相変わらず笑みの無い顔でそう言い放つ。

『教授、私達は似ている様です。』

決して周りの誰かには

聞かれないような音量で。

じっとお互いの目を溶かす様に

見つめ合い、探る。

｢どうやら本当に僕達は同じ頭の様だね。｣

『それは、とても光栄です。私はこの大学で濵田教授の事を1番に尊敬しています。』

｢それは嬉しいね、有難う。｣

濵田教授は腕時計を見るなり

｢失礼、次の授業の準備があるのでこれくらいで。｣

と、準備室へ向かった。

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