貴方の隣で。《紫》 (ページ29)

今日:7 hit、昨日:7 hit、合計:68,043 hit

＊ページ29

.

『失礼します』

｢Aちゃん、こんな時間に珍しいね。｣

私はいつものソファへ腰掛ける。

『昨日、兄の家に泊まりました。』

｢おお、いいですね。｣

『今日の朝の写真です。』

私は携帯の画面を教授に見せた。

｢残念だね。彼とはまた話がしたいと思っていたのに。｣

教授は顔色ひとつ変えず珈琲を飲む。

『犯人は、重岡くんですよね。』

教授は困った顔をしてこちらを見た。

｢どうして僕がそれを知っていると思うんだい｣

『教授は、何となく知っているのかなと思っていました。私はずっと近くに居るのに気が付かなかった。それにまだ、決定的な証拠がある訳でも無いし』

｢僕が犯人を知っていれば、証拠を手に入れられると思ったんだね。｣

『はい。教授からなら、根拠のある情報を貰えるかなと勝手に。ごめんなさい。』

私は軽く頭を下げた。

｢そんなのは良いんだよ。だけどどうして重岡くんが犯人だと思うの？｣

『クリスマスには東京に居ましたし、大学の美術室や鍵の位置も知っています。それにあの時間、彼は授業が無いはずなのに大学に居たんです。

更に今日、私が見た犯人の姿が彼に当てはまるのと、恐らく彼の腕には兄が飼っている犬が付けたであろう引っ掻かれた傷跡がありました。

これといった証拠が無いので何とも言えませんが。それに、何故彼が兄の家を知っていたのかも疑問ですし、何故兄を狙ったのかも分かりません。』

｢まだ分からない問題が沢山あるんだね。｣

『はい。』

私は、食べていいよと言われ

テーブルに置いてあるクッキーに手を伸ばした。

.