貴方の隣で。《紫》 (ページ15)

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｢照史くんは、元気にしている？｣

『はい。実家の近くに家を借りて、そこから会社に通っています。』

｢そうなんだね、なんの仕事をしているんですか？｣

教授は中々敬語が抜けないらしい。

そんな所が少し、好きだったり。

『WESTコーポレーションの営業部です。』

｢営業部か、彼にぴったりだね。｣

『兄自身も今の仕事がとても好きなんだそうです。この前も出張で東京に、』

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＿＿＿＿そうだ、お兄ちゃんも居たんだ。

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｢もしもし～？元気か～｣

『うん』

｢大学は？楽しい？｣

『うん、友達、できたよ』

｢ほんまに？！やったなあ！！｣

お兄ちゃんとの電話は、月に一度くらい。

お兄ちゃんと話すと、

魔法にかかったかの様に元気になる。

｢相変わらず外では標準語なん？｣

『まあ』

｢そっか。それでAが楽ならええけど？｣

『外向きの顔をする為のスイッチやから、標準語は。』

｢ええやん。俺も仕事頑張れるスイッチ欲しいわぁ～！今度出張やねん、それもクリスマスに、やで？｣

そうは言うものの、

とても楽しそうに話している。

『良かったね、寂しいクリスマスにならなくて。』

｢うるさいわっ！ハハッ、でもなぁほんま、同僚もクリスマスは彼女と過ごす、とか言うしさぁ。｣

『お兄ちゃんは彼女作らんの？』

｢欲しくても出来ないんです～。あ、Aこそ彼氏おらんの？そう言う年頃なんちゃうん？｣

『残念ながら兄妹揃ってクリぼっちです。』

お兄ちゃんは豪快に笑って

そうかそうか、なんて言っていた。

お兄ちゃんはクリスマス当日、東京に居た。

そしてお兄ちゃんは私と同じ大学の出身だ。

美術室の位置も、鍵の場所も勿論知っている。

そして何よりお兄ちゃんは、

隠すのが上手い人間なのだ。

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