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シトラス ページ16

*






胸をチクチクと刺す、得体の知れない黒くてちょっとドロドロしたもの。





剛典「 Aちゃん、一人で抱え込むんじゃなくてさ、頼ってくれないかな…? 」




「 …わたし。」





剛典「 ユリちゃんに頼みづらかったら、…例えば…その。」






岩田さんらしくない、歯切れの悪い言い方。わたしは、ただ不思議に思うだけ。






剛典「 おれとかにさ…。頼ってくんない…かな。」






ちょっと自信なさげに、上目遣いでわたしを見つめるその瞳。
ああ、やっぱり見れない。






見つめられる瞳を逸らして、後から気づくの。






今の行為は、岩田さんを傷つけた事にならないかなって。





剛典「 やっぱ…むり…か。 」






なんて、ぼそり呟いてから悲しそうな顔して、ごめんね。って。





もう、やだな。
そんな顔しないでよ。ちがうよ、いやなんじゃないの。






「 はずかしい…の。」






本当は、嬉しいの。
けど、なかなか言い出せなくて、口籠っちゃう。





「 ほんとは、うれしい…です…っ、 」





こんな時、饒舌じゃない自分がとてつもなくいやになるの。






すぐに吃って、わたわたしちゃう。






剛典「 …ねぇ、」





無言が続いてたエレベーターの中、岩田さんが沈黙を破る。
至近距離から香ってくる、シトラスの香り。







剛典「 おれ、やっぱり…。」




岩田さんの綺麗な唇が、次の言葉を紡ぐために形作られていく。





わたしは、その美しい動作を息を呑み込んで見つめるの。





あれ、五階ってこんなに遠かったっけ…。




黒いものがわたしの心を満たすには、充分すぎるの。





もう、音を立てて溢れ出しそうになる黒いもの。




でも次の瞬間、タイミング悪く電子音に邪魔された。






剛典「 …やっぱ、なんでもないや。」





「 …はい。」





これ以上は聞いちゃいけない。
なんでもないや。の先を聞いちゃったら、わたし。きっと、可笑しくなっちゃう。








.

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saki(プロフ) - 続き楽しみ待っています!! (2018年2月13日 18時) (レス) id: 301d608ed7 (このIDを非表示/違反報告)
atok(プロフ) - 隆二クン〜待ってますよ〜 (2017年9月2日 21時) (レス) id: b336124363 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レオナ | 作成日時:2017年8月17日 20時

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