一途にも程がある その4【時透無一郎】

140.格好のネタ ページ5

「仲直りできてよかったね。」



目玉焼きか卵焼きかで悩んでいる時、隣にいるカナヲにコソッと耳打ちされた。
ポッと顔に熱が集まる。



『うん、ありがとう。』



お礼を言うと、カナヲはニコッと笑って温泉卵を手に取った。
…温泉卵もいい…。



「カナヲちゃんは温泉卵なんだ。
俺はどうしようかなぁ。」



ひょこっと、隣に無一郎が現れた。
彼の匂いがしてドキリとする。



朝、起きてからもそうだったけど、昨晩のことが生々しく思い出され、隣に無一郎がいるだけで心臓がうるさい。



「Aはどうするの？」

『えっ…あー…卵焼きにする。』



カナヲに話しかけられても動揺するぐらいだ。
すると、無一郎は私の耳元に手を添え、とある言葉を呟いた。



「昨日、すっごくかわいかった。
今すぐにでもシたい。
てか、動揺しすぎ。」



トレーの上に置かれたお皿が、私の気持ちを代弁するかのようにガシャンと音を立てた。
顔を真っ赤にし、無一郎のことを無言で睨みつけると、彼はクツクツと笑うだけ。



『…ご飯入れてくる。』

「あ、うん。
…時透くん、何かしたでしょ。」



カナヲが無一郎に話しかけているのを背にし、私はスタスタとご飯コーナーに向かった。



やばいぞこれは。
私をいじめる格好のネタになってしまう。

141.ウトウト→←139.逆効果 〜無一郎side〜

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す