一途にも程がある その3【時透無一郎】

102.絆される ページ12

『…ごめん。
もうちょっと待ってね…。』

「もう待てないよ。」



無一郎の言葉にカチーンと固まった。
……いや、待って。
今日は30日。
付き合い始めた日から5日しか経っていない。
それなの、待てないと！？



「俺の部屋行こ？」



するりと腰に回された手にピクンッとなる。
そんな甘い声で誘わないでほしい。
絆されそうになってしまう。



『えっと…その…待ってよ…。』



おどおど、わたわた、ドキドキしながら声を出した。
すると、無一郎はクスクスと笑い始めた。



「嘘だよー。
どんな反応するか試したくて、わざと言ってみただけ。」

『…はぁ！？』



思わず大声を出した。
おどおど、わたわた、ドキドキした自分がみっともなさすぎる。
そして、ふつふつと怒りが…。



『バカ…！
バカ無一郎…！』

「へぇ。」



無一郎は余裕の笑みを浮かべ、もう片方の手で私の顎を掴んだ。



「そんなこと言う割には、もうちょっとで絆されそうだったくせに。」

『そ、それは…。』

「かわいい。」



唇が軽く触れる程度のキスをされた。
悔しいけど、本当にもう少しで絆されそうだった。
私が絆されるまでのカウントダウンが見える…。

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