ㅤ ページ4
●
キス、という二文字を見た瞬間、本能的に反射的に後ろに飛んで逃げた。
相手は先程戻した鉄球を取り出そうと、腰に手を当て身構えている。
「……俺はジャイロだ」
「えっ…あ、そっすか……私はAです」
そんな敵意剥き出し状態で自己紹介されても困る。
でも相手に言わせておいて自分は言わないのもどうかと思ったので、一応下の名前だけ言っておいた。やっぱり何も言葉が返ってこなかった。解せぬ。
「……じゃー、今からやることは誰にも言うなよ? 絶対に!」
「もちろんッ!」
やけに小声+早口だったので聞き取りにくかったが、兎に角言うなってことだろう。それは大賛成だ。私だって誰にも言いたくない。
うんうん頷くと、「じゃあ…」と言いながらジリジリ近づいてきた。ジリジリと後退るも、元からそんなに広いわけではない部屋。壁につく。
「壁ドンでもする?」
「しねぇよ馬鹿」
思わず悪態をつきながら、下唇を噛み締め目を瞑る。
これはもう逃げられないと察したからだ。視覚はないんで聴覚が敏感になる。布が擦れるような音。そして、ゴクリと息を呑む音。
「……ん、」
「…………」
さり気なく、顎をくいっと上に上げられている。
勿論目は開かない。なんか怖いし恥ずかしいし。多分ジャイロさんも開けていないだろう。
唇に感じる生温かい感覚。初めてがコレかーと思ったが、別に悪くもないだろう。いや悪いか。顔の良さで我を忘れている場合じゃあないぞ私よ。他人とキスとか嫌すぎんだろ。
………いや待て。………ちょっと…コレ…。
「…………いや長いな!? 長すぎるわムッツリスケベ野郎!!」
「あ、バレた?」
「バレバレにも程がある!!」
やけに長いキッス(笑)だったので、胸板をドンッと押して離れさせた。結構な力で押したと思ったが、よろけてもいないのは凄い。怖い。満足そうに唇を舌で舐め、帽子を被っている。クッソ絵になってるなぁぁぁ。
「満更でもなさそうだったけどな〜」
「……」
「その冷たい瞳やめない?」
じゃね、また今度〜と手を振りながら先に部屋を出たジャイロさん。さん付け忘れてない私って偉いと思う。普通なら呼び捨てにしてた。
二度と会わねぇ、と彼の背中に投げかけながら、ゴシゴシと袖で口を拭い部屋を出た。
▶
ジャイロは最中、目を開けてた。
120人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結兎亜(プロフ) - 初コメ失礼します!リクエストで、ジョニィの…軽めに、「ハグしないと出られない部屋」、お願いしますっ! (2022年12月4日 18時) (レス) id: 7bda5675bf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり - 天才羨ましい、、そっか···神ってマジでいるんだ··· (2022年12月4日 15時) (レス) @page41 id: 7a9a52b587 (このIDを非表示/違反報告)
スズメ(プロフ) - 作者さんの短編とても面白いです(((o(*゚▽゚*)o)))作者さんのほかの小説が読んでみたくて。処刑少女と××という小説を読んでみたいのですが、もしよろしければパスワードを教えて頂けませんか。 (2022年11月26日 10時) (レス) id: e3bb4f0ab3 (このIDを非表示/違反報告)
ケイキ(プロフ) - 更新お疲れ様です!いつも楽しく読ませてもらってます!あと腐の短編集めちゃくちゃ読みたいです… (2022年11月21日 6時) (レス) @page39 id: 0694030e7d (このIDを非表示/違反報告)
森(プロフ) - うおおお!?めっちゃ面白いです!!単純明快大ピンチ…な、なんか頭に電柱が駆け巡るんですが… (2022年10月24日 21時) (レス) @page30 id: 16b29645b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:どりこく x他2人 | 作成日時:2022年9月11日 10時