道を聞いたら誘拐された。『文スト』

26日目 ページ27

「ああ最悪だ。朝から君の顔を見なくちゃならないなんて」




ロビーに行くと、中也が来ていた。少し濡れているから、今来たところか。




「うるっせぇよ。俺だって、朝から手前に会いたくなかったよ。消えろ」



「私の台詞だ。視界から消えたまえ」





中也は私を睨んで横を通る。その時、微かにコロンの香りがした。いつも中也が付けているものと違う。そもそもこれ、








女性用のものの香りじゃあないか。








「ねぇ、中也」



「あ？」



「香水、変えたの？」



「……まァな。それがなんだ？気に食わねェとか言うのかよ」



「いいや。ただ、それ、女性用のものだよね？どうして中也がそんなものをつけているのだい？」





私は匂いに敏感だ。女性と会うことは少なくないのだよね。仕事のためにという場合が多い。



その時に、コロンを付けてくる人なんて沢山いる。そのうちに、香りを覚えてしまったのだよ。





「気のせェだろ。何で俺が女の香水をつけなきゃいけねェんだよ。……仕事があるんじゃねェのか？」



「…マフィアに、秘密でいろいろなものを密輸しているらしいから、その確認さ」



「そうかよ。せいぜい、敵に見つかって撃たれて死んでこい」





中也はひらひらと手を振って去っていく。……まさか、ね。









・









「昨晩と、同じジャケットを着てきちまった」

27日目→←25日目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す