15。キヨとエレベーター ページ38
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「あ、それ。もしかして14階の資料室にですか?」
「わ。びっくりした…そうだよ。キヨくんも?」
キヨくんが押すカートには既にファイルが山積みで、返事をしているうちに私が持っていたファイルもまとめて乗せてくれた。
「ありがとう。お願いしてもいいかな」
「あー…実は資料室の場所わかんなくて。案内してもらえますか」
すぐにデスクに戻って仕事をしようと思ったけど、そう言われてしまうと戻るわけにもいかない。
私たちはすぐにエレベーターに乗り込んだ。
「あ、そういえばこの前の企画書が、えっ…なに…?止まった…?」
「えっ…これ落ちたりしないよな?」
突然暗闇に包まれたと思えばガタンと大きな音が鳴る。どうやらエレベーターが止まったらしい。私は内心焦りながら平然を装う。
「大丈夫、こういう非常時にエレベーターは電気は点くはずだから。すぐ点くよ。大丈夫、大丈夫…!わ、ほら!」
ぱっと明るくなったと思えば、オレンジ色の光に照らされたキヨくんのスーツの裾を掴んでいたことに気づく。
「大丈夫すか?暗いの苦手?」
「や!ちが、くて…これは…ごめん」
そう言いながら手が震えているのがわかる。すぐに手を離したら、力が抜けてその場に座り込んでしまった。
暗いのも狭いのもあまり得意ではない。いつもなら上下に動いている感覚があるエレベーターがこんなに静かに止まるなんて、知らなかった。
「これって…閉じ込められた、ってことっすよね」
「そう、いうことになる…か」
キヨくんはすぐに非常ボタンを押して、外に連絡しようとしている。
「おーーい!だれか!聞こえますか!!」
このエレベーターは普段社員は使わない、業者用の大きなものだから誰かが近くにいるとは考えにくい。
このまま数時間閉じ込められてしまうかも、と嫌な予感がして不安になる。
「やべ…俺、スマホ置いてきちゃった…先輩持ってます?」
「あ、うん。ここに…っあれ…ない…?」
そんなわけない、と全部のポケットを確認しても出てくるのは昼に食べたパスタ屋さんのレシートだけ。
「うそ…どうしよう…」
「大丈夫大丈夫!すぐ動きますって」
いつもより優しい笑顔でそう励まされると、大丈夫かもと思えるから不思議。不安に駆られて忙しなくなる心臓の動きを落ち着かせようと深呼吸をする。
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sawa0717(プロフ) - レトさんの夢小説を探していたところこの作品に出会いました!みんな口調にも違和感がなくとても面白かったです!!!最終投稿日から日が空いてしまっているのですがレトさんと喧嘩してしまって夢主ちゃんが泣く的なシュチュが見たいな〜と、更新楽しみにしております (2022年12月3日 22時) (レス) id: bed7cc28ea (このIDを非表示/違反報告)
ぴより(プロフ) - ゆゆゆさん» コメントありがとうございます(;o;)しばらくぶりの更新にこんなに嬉しいコメント頂けると思いませんでした!とても励みになります!!ゆっくり更新の分質を高められるようにがんばりますので気長にお待ちくださいo(^o^)o (2021年2月8日 0時) (レス) id: 03f42a40b0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。以前から拝見させていただいており、更新を待ち侘びておりました!お忙しいとは思いますがお身体に気をつけて、これからも更新楽しみにしております! (2021年2月6日 0時) (レス) id: 89ceb73b2b (このIDを非表示/違反報告)
ぴより(プロフ) - 六花さん» リクエストありがとうございます!とわこさん描きたいと思ってたのでそのネタ頂きます、、!笑 順番に書いていくので少々お待ちください! (2019年12月13日 21時) (レス) id: f82d25de14 (このIDを非表示/違反報告)
六花(プロフ) - ぐっとくる設定で好きです!!サブキャラをメインで書くことってありますか?あるなら夢主ちゃんがとわぽんorとわぽんが夢主ちゃんの夢を見る話とか見てみたいなあと思います (2019年12月8日 16時) (レス) id: 9a3b31f982 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴより | 作成日時:2019年10月17日 23時