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寒かったな、なんて家に着いてから考える。
折角彼がタオルを貸してくれたのに、全く意味がなかった。
「終わったんだなあ……」
背負っていたリュックが肩から落ちる。
その中にある勉強道具の無事を確認する前に、私は変な安堵感を覚えていた。
解放感に浸っていたのだろうか。
その続きを期待などしていなかったのだろうか。
私だけじゃない。私の心も嘘吐きだ。
岩泉にあれほど嘘を吐いたのに。
私はまた、性懲りもなく嘘で自分を隠す。
「うん、大丈夫」
自分自身まで偽って、無理矢理笑顔を作った。
その日の夜。
岩泉からメッセージが届いた。
『大丈夫なのかよ』
たった一言の、当たり障りない言葉。
その画面をしばらく見つめていた私は、脱力感に襲われる。
『大丈夫だ』と言い続けていたのに。
君はどこまでも心配性で、それでいて優しすぎる。
「私は多分、岩泉が思ってるほど脆くはないよ。
簡単に諦めがついたし、そもそもわかっていたことだから」
だから、大丈夫なはずだったんだ。
君がこうしてメッセージを送ってくるのは、及川が私を心配しているから。
君はただ、困った幼馴染に協力しているに過ぎないんだ。
私がどうとかじゃなく、及川が君を動かしているようなもんで。
そこに君の余計な気持ちなんて、存在しない。
平気だよ。
その文字を消して、私はたった一言を打ち込んだ。
『ありがとう』
それはちっぽけな言葉だったけど、よくよく考えればあの時及川に一番言われたくない言葉でもあった。
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作者名:ヰ都 | 作成日時:2017年9月30日 22時