運命ロマンス [平野紫耀] (ページ9)

今日:4 hit、昨日:6 hit、合計:20,581 hit

9 ページ9

.

"もう、出たほうがいい"

また、小さな声でそう言ったケントさんは

「じゃあ、俺たちはこの辺で！」

いかにも怪しいセリフを残してわたしの腕を引いた。

もうお持ち帰りかよ～とか
送り狼なんなよ～とか
抜け駆けずりぃぞ～とか

わたしたち、何にもないのに、

まあ、予想はしていたけど
たくさん冷やかしを受けながらお店を出た。

「家まで送るよ、どの辺？」

A「いや、大丈夫です」

「それぐらいさせてよ、無理やり抜けさせたんだから。」

" 最寄り、どこ？ "

頑なに引かないケントさんに甘えて
わたしは最寄りの駅を教えて
送ってもらうことにした。

「よかった、俺今日飲んでなくて」

A「飲まなくて、よかったんですか？」

「うん、明日の朝はやくてさ。」

A「そうなんですね、」

ケントさんの白の軽自動車の中

ポツポツと、交わす会話。

ふわっとさりげなく、爽やかな香りがする車内。

夜の街は相変わらず賑やかだな

窓の外ぼんやり眺めてたら

「…あ、」

ちょうど、この前のコンビニの前を通った。

チラッと見えた、この前のビニール傘のコーナーには
もう、たくさんの傘が出されていて

なぜがすごく、寂しい気持ちになった。

しょうがないよ、

今日はいい天気だったから。

いつしか憂鬱だった雨も
いまでは待ち遠しいものに変わっていて

雨の日が来れば、また会えるんじゃないかと

何の確信もない、期待を持ち合わせていることにわたしはこの車内で気づいてしまった。