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わたしの家の前
最寄り駅までで大丈夫ですって
何度も言ったのにもかかわらず、
" 危ないから "
そう言って結局家の前まで送ってくれた、紫耀さん。
A「ほんとにありがとうございました。助かりました。」
「ん、夜は危ないからね、気をつけなよ〜」
A「……結局、最後まで聞かないんですね」
「ん?なにが?」
A「今日、なにがあったのか。」
「ん〜辛いことでしょ?俺、そんなこと聞くほど意地悪じゃないよ笑」
家の前の道路脇に止まった車の中
紫耀さんはふっと笑いながら
サングラスを外して
わたしの頭、ポンポンって撫でてきた。
「でも、ほんとよかった、無事で。」
A「…なんでそんなに優しいんですか?」
「優しくないよ、全然」
A「…また、わたしたち、会えますか?」
「わかんないけど、会えたらいいね」
" じゃあまた会えたときにこれ、返してよ "
そう言って、外したサングラスを
わたしにかけさせた。
A「…え?でもこれ、大切なものじゃないんですか?」
「うん、俺サングラスすげえ好きでさ、集めてんの。これが1番お気に入り。」
A「じゃあまた会えるかもわからないのに、預かれません!」
「…じゃあ会えばいいんじゃない?」
そう言って、助手席の前にある、
ダッシュボードからボールペンとノートをとりだして
その、ノートの端っこに小さく番号を書き始めた。
そして、そこの部分だけちぎって
わたしに渡してから
「それ、返す気になったらまた連絡してよ。」
「あ、それお気に入りのやつだから早めにね?笑」
そう言って渡してきた。
いま、わたしの元にあるのは
11桁のすこし汚く書かれた、番号と
淡い期待。
はやく会いたいって捉えてもいいですか?
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作者名:あゆ | 作成日時:2020年3月24日 16時