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もちろん、夢のような赤信号の時間はあっという間に過ぎて、青になった信号
それと同時に
握られていた手がそっと、離れた。
まだ、温もりが残っているこの手は
やけに熱く感じた。
A「…ありがとうございます」
「んーん、全然。俺も違う道行けばよかった。ごめんね。」
この人は全然悪くないのに謝ってきて、
ああ、この人すごいなって。
30分だけの夜のドライブわたしも誘われたいなとか
あのコンビニの近くに住んでるって言ってたけど
どの辺だろうなとか
なんでいっつもサングラスしてるんだろうとか
お仕事なにしてるんだろうとか
彼女いるのかな、とか
考えてたらキリなくて
もっと、この人のこと知りたいって素直に思った。
A「…あの、質問していいですか?」
「んー?いいよ、なに?」
A「お仕事、なにしてるんですか?」
「…え?仕事?」
また、目を見開きながらこっちを見つめる、この人。
わたしよりふたつしか変わらないのに
外車に乗ってるし
学生ではないんだろうな〜って
正直、すごい気になってた。
「…ん〜そうだな、なんだろ。ひとつじゃ言い表せないな、笑」
A「…え?」
「いつかわかるよ。…いや、Aちゃんに知ってもらうためにもがんばるね、俺。」
想像してた返答ではなかったけど
"Aちゃんに知ってもらうためにもがんばるね"
そう言ってくれたことがすごく嬉しくて、もう十分だった。
A「…あ、それと、名前、聞いてもいいですか?」
「名前?あ、言ってなかったっけ?」
A「はい、聞いてないです」
「えっとね、俺の名前は紫耀!」
A「…ショウ、さん、」
「そう!色の紫に、耀くで紫耀。…名字は、内緒で!笑」
空中で漢字を書きながら身振り手振りで教えてくれた、紫耀さん。
このとき、悪戯っ子みたいに笑っているこの人に
違和感もなにも感じてなかった。
名前だけ知れていれば
それでいいと思ってた。
少しは、繋がれた気がしたから。
だけど、これから少しあと、知ることになる。
この人がスーパースターだと言うことを。
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作者名:あゆ | 作成日時:2020年3月24日 16時