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『……大丈夫ですか?お嬢さん……遅れてしまってすみません』
あ、なんかこの言葉師範に助けてもらった時に言われた気が……。
「ぁっ……ぁり…が…とぅ……ご…ござい…ます」
随分と弱々しい声だな。
……?
それにこの子、怪我してるじゃない。
それに、苦しそう……。
もしかして、あの鬼……毒を扱う血鬼術を持ってた……?
……ここは隠に任せよう。
『少しだけ我慢してくださいね、口は閉じていなきゃ噛みますから気をつけて』
そう言ってから少女を横抱きにする。
「ひゃっ……!」
『では、行きますよ、しっかり捕まっててくださいね!』
ダンッ
「?!?!(速い……!)」
早くしなきゃ命に関わるかもしれない……。
この子には悪いけど、もう少し速度を上げよう。
ギュッ
!!
『ふふっ大丈夫です、落としたりはしませんよ』
そう、優しく微笑むと、少女は目を丸くさせ、次に頬をほんのりと赤く染めた。
相当嬉しかったのか、少女はにまにましている。
ふふっ可愛いなぁ。
今まで沢山辛い思いをしただろうに、こうやって笑顔を出せる彼女は、私よりも何倍も心が強い子なのだと思った。
……少し、羨ましいとも思ってしまった。
……辛い思いを沢山してきた彼女に羨ましい、だなんて……私は最低だ。
『もう少しですからね』
こんな考えをしてごめんね、という思いを込めながら彼女を再度強く抱き直した。
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