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『はぁ…………』
今は徐々に完成に近づいてる五つの薬の研究を進めていた。
まぁ寝台に座って書物に書いてるだけなんだけどね。
でもこの研究を進めてるおかげで気持ちが少し落ち着いてる気がする。
役に立てるって思えるからなのかな。
『ふぅ…………外ももう、暗くなってきてる』
涼しい夜風に当たりたくて、縁側に行くことにした。
これくらいならしのぶちゃんも許してくれるはず。
カ「あら?どこに行くの?」
『ッ!か、カナエさん……』
カ「もしかして鍛錬に行くつもり?それなら止めるわよ?」
『大丈夫ですよ、ただ少し夜風に当たりたいなって思っただけですから』
カ「あらあら、そうなの?フフッそれくらいなら、いいわよ」
『ありがとうございます』
よかった、見つかったのがカナエさんで……。
しのぶちゃんだったら今頃寝台に連れ戻されてただろうな。
『ん…………涼しい』
気持のいい風で心が落ち着く。
こんなに一息つけたのはいつ頃だっただろう。
師範が亡くなる前、かな。
『鍛錬……したい…………』
せっかく落ち着いてもすぐに師範を思い出して鍛錬しなきゃという思考になる。
弱い、役立たず、情けない、不甲斐ない。
そんな言葉ばかりが頭に流れる。
『夜風も……意味なかったな』
戻ろう、そう思って立ち上がろうとした時だった。
「ねぇ桜木さん」
聞きなれた、最近は聞けなかった大好きな声が、私を呼び止めた。
『………………久しぶり、時透くん』
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