光一side ページ24
ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ
ﾜﾝﾜﾝｯ
ﾜﾝｯ
愛犬のパンが叫び続けているらしい。
俺を呼んでいるらしい。
「ﾜﾝｯ!!!」
「パン、分かったよ…」
毎日というか、
仕事のある朝の日常茶飯事。
近くに来ている愛犬の顔をワシャワシャと撫で、リビングに向かい、カレンダーを確認する。
今日は…。
日テレ。
音楽番組。
20年前、有難いドラマをいただき、
その主題歌と新曲を歌う予定だったが……。
仕方がない。
神様は嘘をつかせない。
ただ…。
自分にも意思はあるから。
それにします、と決めたんだ。
ジャージに着替え、それなりに荷物を詰めて玄関に出る。
…ｶﾞﾁｬｯ
「………あざー…っす」
マネ「……光一くん…」
「なんや、いつものことやないか」
効率的主義な事、あまり食事に興味がない事はファンの人にも知れ渡っている。
もちろんマネージャーにも。
だけど何故か理解してくれない。
………20年以上の付き合いなはずなのに。
「……………」
車の中に、エアコンの音だけが響く。
終始、無言。
マネ「そうだ、光一くん」
「ん？何？」
マネ「剛くんから、預かってるものがあって…」
スタジオの駐車場に留めた車の中で、
俺は剛からの手紙を受け取った。
よく見る字で、
「光一」と書かれている。
マネ「それ、今読んでもいいし、楽屋で読んでも……」
「そっか。……ありがと。楽屋で読むわ」
そう言って降りようとした時、
マネージャーが言った言葉は忘れられなかった。
マネ「そういえば剛くん、
『ありがとう』って言ってたよ」
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作者名：由乃 | 作成日時：2017年8月15日 0時
