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よく分からない感情のせいで、吉野くんになんて言っていいか分からないまま、しばらくなにも言えずにいると不意に視界が吉野くんの顔でいっぱいになった。
「...っ」
こんな状況に普通でいられるわけがなくて、目をそらすけど
北「Aちゃん、俺のこと見て？」
吉野くんにうながされて、恐る恐る顔を上げると目の前には笑みの消えた、真剣な顔の吉野くん。
北「ねえ、Aちゃんはさ、それを見て怒ったの？」
『え、...う、うん。モヤモヤして、すごくいやだなって...』
北「...ねぇ、それってもしかしてヤキモチ？」
ヤキモチ...？
今まで経験したことなかった気持ちも、そう言われるとすごくしっくりくる。
あぁ...わたし、あのときヤキモチ妬いてたんだ。
きっとじゃない、ぜったい。
『ヤキモチ、だよ...』
北「やばい、嬉しすぎるんだけど...」
そう囁いて、吉野くんはゆっくり体を離した。
北「...昔はね、来る者拒まずって感じで、誰でもよかった。でもなんでだろうね。Aちゃんに出会ってからの俺にはもう、Aちゃんしか見えてない。」
『え...？』
真剣な吉野くんの瞳に囚われて固まっていたそのとき、吉野くんを呼び出す校内アナウンスが流れた。
北「呼び出しくらっちゃった」
『はやく、戻ってあげなきゃ、』
北「うん。しょうがないからそうする。じゃあね。Aちゃん」
ニコッと微笑んで、わたしの頭をポンポンと撫でると、吉野くんは歩いていってしまった。
騒がしい胸の鼓動を感じながら思い出していたのは、優しい柊くんの笑顔。
さっきの告白、、あの時は驚いて理解しきれなかったけど、今ならちゃんと受け止められる。
自分の中に芽生えた気持ちを知ったからこそ、柊くんの気持ちも分かるし、それが受け入れられなかったらとっても苦しいことも。
わたしの答えは、柊くんを傷つけちゃうかもしれない。
でも、柊くんは勇気をだしてわたしに伝えてくれたから、まっすぐな柊くんの気持ちに、ちゃんと向き合わなくちゃ。
柊くん、まだ体育館にいるかな。
柊くんのことを考えると切なさが込み上げてきて、それをグッと抑えながら、わたしは走り出した。
柊くん、たくさん優しくしてくれてありがとう。
柊くんのおかげでたくさん楽しい思い出ができたんだよ。
感謝してもしきれないくらい。
でもね、わたし、なによりも大切な存在に気づいてしまったの...。
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作者名：MINT | 作成日時：2020年2月21日 18時
