甘いだけじゃ物足りない【ツイステ】 (ページ13)

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困惑したまま私がそう言えば、上機嫌にどーいたしましてと言う声が聞こえた。

なぜ彼はここまで上機嫌なのか分からないままぼーっとしていると、ふと自分の寮ではない方向に向かっていることに気がついた。

「ねえ、エース？
こっちにオンボロ寮はないよ？」

疑問に思った私がそう口を開けば、何がおかしいのかケラケラと笑いだした彼に少し恐怖を感じた。

「誰もオンボロ寮とは言ってねぇじゃん
今行ってんのはハーツラビュルだよ」

確かに彼は寮まで運んでるとは言ったが、何処の寮かは言っていない。

嫌な予感がした私は、もう自分で歩けるからと彼の背中から逃れようとすれば、まるで私を離さないと言っているかのような腕の強さで足を締め付けてきた。

バスケ部なだけあってやはり腕の筋肉は発達しており、とてもじゃないがこれ以上暴れるのはよくないと判断し、大人しくする。

鏡舎まで行けば誰かしらいるだろう、その人に助けてもらうしかない。

しかし、そんな私を裏切るかのようにそこには誰もおらず、ゆっくりとハーツラビュル寮へ続く鏡を彼は慣れた様子でくぐって行く。

流石にまずいと感じた私は彼の脇腹に手を入れくすぐり、何とか腕から逃げ出した。

そのまま鏡舎へ続く鏡まで走ったが、後一歩と言うところで捕まってしまい、後ろを振り向くといつもの優しい笑顔ではなく、光のない目でこちらを見ていた。

「逃がすわけねぇじゃん…、ずっと欲しかったんだからさ

俺が何のために長い時間かけてAと仲良くなったと思ってんの？

全部この時のためだよ、わざわざ寮長に頼み込んで1人部屋に移動したんだぜ？

色々理由作ったりすんの、すげぇ大変だったんだからな」

怯えて立てない私を軽々と持ち上げながら自室に戻る彼はそう私に話しかける。

同じ1年生、気さくで明るくてすぐに仲良くなれた。
よく、Aクラスの話をしてくれてた、監督生さんもグリムもエースとデュースはマブだとか、いいやつらだって言ってて羨ましいと思った。

でも全部作られたものだった、彼は初めから私を自室へ閉じ込めるために近づいてきていた。

その事実に簡単に私の心は折れ、彼の腕の中で泣きじゃくった。

そんな私に彼は恍惚とした表情で

「これからは悲しい時も嬉しい時も永遠に、ずぅーっと一緒だからな」

そう言って流れる涙を舐めとった。

知らぬ間に芽生えた狂気___Fin