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14話 ページ16

先生も哀愁を漂わせる目の前の少年に同じ事を感じたのか、優しい子供をあやすような顔で首を縦に振った。


その返答を聞き、嬉しそうに顔を綻ばせ、先生の大きな手に自分の手を添えると、先程まで大事そうにしていた月の石を先生の手のひらに置き、握らせた。


「 じゃあこれ、もらってよ 」


「 宝物じゃあないのか 」


「 うん、俺ねこの石見てると自分もどこにだって行けるような気がしてた

でも…、もう何処にも行かないって決めたから 」


月を背景に美しく笑う少年を最後に映像は続くことはなかった。


はっと目を覚ますとそこには見慣れた保健室の天井で、ガバッと起き上がると、同じように隣のベッドにいた寧々ちゃんも起き上がった。


「 …何、今の…、夢でも見てた、のかな?」


「 目が覚めたか 」


「 先生…?」


本を閉じながら私たちに視線を向ける先程まで夢に出ていた人がいた。


きっと今のは何かの夢だろうと思い、ベッドから降りて帰ろうとする私を先生は止めた。


「 お前いきなり倒れたんだ、もう少しゆっくりしておけ 」


「 …はい 」


寧々ちゃんがそんな私を他所に、先生に「 今のって… 」と困惑した声を出す。


私たちが今見たものは依代に宿った記憶らしい。
先生の依代は月の石だったため、月の石に関する記憶の一部を見せられたのだろう。


「 じゃあ…先生が言ってた未来を変えた人って…まさか… 」


「 柚木普、昔の七番だ 」


昔の花子さん…?
待って、依代を破壊できる寧々ちゃんが記憶を見るのは分かるが、何故私まで…?


それに未来を変えた唯一の人ってどういうこと…と頭を抱えた。


「 普通の『 普 』と書いて『 あまね 』と読むんだ、変わってるだろう?

まァ…、変わってたのは字面だけじゃあないが… 」


「 待って…、え、待ってよ…
私を置いて進めないで、分かんないよ…、何で私まで同じ夢見てんの…、私がおかしいの?」


何も考えたくないと脳が言っている、これ以上お前は知らなくていいと本能が言っている、でも泣いたり喚いたりするのは違うだろと理性が言っている。


「 ごめ、なさ…やっぱりもう帰ります…

寧々ちゃん、また明日…教室でね…っ 」


「 おい待てっ、安見!!!」


「 Aちゃん!?」


先生と寧々ちゃんの声を聞こえないフリして保健室から飛び出した。


途中花子さんや源くんがいたような気がしたがとりあえず私は全力で走り、今あったことは自分の中に留めておこうと決めたのだった。

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人参ぱんつ(プロフ) - yamiさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません、とても嬉しいお言葉ありがとうございます、頑張らせていただきます! (2020年8月21日 18時) (レス) id: a7aebfbb6e (このIDを非表示/違反報告)
yami - 凄く面白いです!更新頑張って下さい。 (2020年7月28日 12時) (レス) id: 0abcc7321c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:人参ぱんつ | 作成日時:2020年4月22日 1時

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